CBに転向したのは…
「もともとアタッカーなのでああいうのは得意ですし、これからも狙っていきたい」
本職のCBでは、身長180cm体重83kgの屈強なボディを誇る川崎のFWエリソンとのさまざまな駆け引きを展開。決定的な場面を作らせないまま、エリソンは57分に交代でピッチを後にした。
「フィジカルが強い選手ですし、自分はフィジカル的にまだまだ通用しないと思っているので頭を使いながら、トラップした隙やパスコースに入るとか、そういう対応を常に考えていました」
こう振り返った稲村のサイズは182cm72kg。FC東京U-15深川から群馬・前橋育英高等学校をへて2021年に東洋大へ入学。高校時代にCBに転向した稲村は、体の厚みを含めた強さこそ成長途上にあるものの、それらを補って余りあるものがあると舞行龍は希少価値の高い左利きのCBへ頼もしげな視線を送る。
「左利きなのが大きい。前へ運びながら逆サイドに蹴れるし、そこで相手のプレスを一気に剥がせる。彼の武器をチームとしても使っているなかで相手にスペースが生じ、そこから自分たちのサッカーができる」
武器の左足を高く評価する新潟の松橋力蔵監督も、志願する形でチームに帯同した稲村を先発に指名し、フル出場させた一戦に「今日も十分すぎるほどの活躍をしてくれた」と目を細めた。
リーグ戦でも稲村が先発した3試合は全勝。合計で15失点を喫している4連敗中の窮状で、実は稲村はベンチにも入っていない。いつしか必要不可欠な存在になった状況を、稲村自身はどう見ているのか。