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久保建英 2日前

久保建英のカットインはなぜうまくいく? 偶然ではない身体の動かし方、高確率の突破を可能としているもの【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

「骨盤の回旋を止める」蹴り方の利点

 エスパニョール戦でのゴールは久保の得意な形のキックで、『ボールインパクトの直前で骨盤の回旋を止める』蹴り方になります。キック動作は通常、蹴り足の前方へのスイングと連動して、蹴り足側の骨盤(左足のキックでは左側)が前に出てくる形で回旋(右回旋)していきますが、久保は上半身の姿勢を保持しながらボールへのインパクトの直前で骨盤の回旋を反対方向(左)にグッと止めることで蹴り足を走らせ、そのまま身体の中心の近くを通して内側に振る(軸足の内股に触れるくらい)ことで、身体の重さが乗ったインパクトの強いキックになります。

 フォロースルーは軸足を地面から外し、身体全体の向きを変えながら蹴り足から着地する形になりますが、この蹴り方はインパクトの瞬間には蹴る方向に対して上半身が横に向く形になるため、ゴールキーパーからはボールが飛んでくるコースが読みにくくなりやすい、という利点もあります。

 このようなキックで骨盤の回旋を連動させるためには、コア・スタビリティはもちろん、軸足の股関節の動的柔軟性も重要になります。踏み込みでは、脚で強く踏ん張るというより、骨盤から重さを乗せる形で軸足を安定させつつ、必要に応じて股関節の動きをスムーズに出すことが必要です。

 久保はプレースタイルの特徴として、ボールの置きどころを身体の真下寄りの左側にする傾向があります。この状態は、相手選手の脚が届きにくい、いわゆる『懐の深さ』を生みます。

 ちょうど骨盤の左側を後ろに引いたような姿勢になるため、骨盤の回旋を止める蹴り方のインサイドキックと相性が良いのです。

 ボールキープしながら予備動作の少ない形で蹴り出される強いインサイドキックや、サイドで仕掛ける際にキックした左脚を素早く着地させてそのまま急加速する、といった久保特有のプレーの背景には、このような身体的特徴も影響していると考えています。

(文:三浦哲哉)

プロフィール

三浦哲哉(みうら・てつや)
1980年4月25日生まれ、岩手県出身。理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。大船渡高校、順天堂大学、専門学校社会医学技術学院卒。整形外科クリニックでの理学療法士業務と並行して、サッカーを中心にトレーナー活動を経験。タマリバクラブ(ラグビー、2005〜08年)、慶應義塾体育会ソッカー部(10〜20年)、全日本大学選抜(13〜15年)、ユニバーシアード男子日本代表(15年)でトレーナーを務めた。

書籍情報

『サッカーフィジカルのプレーモデル』

三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修
定価:2,310円(本体2,100円+税)
これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型
世界で活躍するトップ・オブ・トップのサッカー選手の動作的特徴として、「スプリント」「減速・加速」「方向転換」の速さが挙げられる。それらを支えているのが、「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」の3つのバネである。また、身体的特徴として、「上半身の姿勢の良さ」「腹~腰回り、下腹部の筋群の発達」「自由度の高い股関節」がある。本書では、現代サッカーを制するために必要不可欠な3つのバネの作り方を中心に、中学生年代から大学生年代かつプロ選手まで適用できる、これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を提示する。

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【了】

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