「見ればわかると思いますけど…」
「代表に選出されたからには何かしら成長してきてほしいし、借りてきた猫状態なのが一番恥ずかしい。参加してきました、で終わるのではなく何かを盗み、世界というものを感じ取り、ウチのピッチに帰ってきたときに違いや、あるいは戦っている姿をみんなに見せる責任がある。
その意味では、以前と変わらないような状態が少し見えたので。帰ってきたばかりだからこそお灸をすえる必要もある。彼の成長のためにも代表扱いされながら、悠々自適にチームへ戻ってくる姿勢が、われわれにとって最もウィーク(脆い部分)になってくるので」
求めているのは、いわゆる“色気”の類とは対極に位置するものとなる。愛あるカミナリを落とされてから2日後の9月14日。ベンチススタートだったアビスパ福岡戦で昌子源の負傷退場に伴い、CBとしてスクランブル出場し、技術と経験をフル稼働させながら勝利に貢献した姿はその一環だった。
川崎戦でCBを組んだ昌子は、望月へこんなエールを送っている。
「反省点というものはすでにヘンリーの頭に入っているはずだけど、彼にとってはここからモードを代表に切り替える難しい状況になるし、頭のなかがこんがらがって、とならないように頑張ってほしい。
見ればわかると思いますけど、ポテンシャルを含めて素晴らしいものをもっているのは間違いないので。監督もそういう期待値も込めているところがあると思うし、僕自身、これから先、もっとよくなると信じているし、だからこそ成長につながる材料をしっかりとつかんで、また帰ってきてほしいですよね」
昌子が語ったように、川崎戦を終えた望月は町田を離れ、森保ジャパンの一員としてサウジアラビア代表戦に臨む敵地ジッダへ飛び立った。代表として期する思いを、川崎戦後にはこう語っている。
「まずはベンチ入りするメンバーに入れるようにアピールしていきたいし、試合に出る、出ないはもちろんわからないですけど、試合に出る気持ちを常に作りながら活動してきたいと思っています」
サウジアラビア戦から中4日で、舞台を埼玉スタジアムに変えてオーストラリア代表戦に臨むのが15日。先輩選手たちの誰もが歩んできた、所属クラブと代表チームとでメンタルをしっかりと切り替えて、両方の戦いが繰り返されるシーズンを戦っていくサイクルに入った望月は、町田に帰ってくる16日には大きな背中を含めた立ち居振る舞いで数多くの土産話を語れるように、砂漠の地で奮闘をスタートさせている。
(取材・文:藤江直人)