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Jリーグ 2か月前

「ボール保持」に手を出した湘南ベルマーレの行く末。新たな設計図を手に、「らしさ」から脱却した先の世界【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

仕上げはアンカー田中聡。大逆転の鹿島アントラーズ戦では…

 湘南ベルマーレのボール保持は、相手と配置が噛み合わないことを前提としている節がある。フリーになりやすい3バックの両脇がフリーにならない構造を相手が準備してきたときに、配置ではなく、ボール循環で解決することを日常にするにはまだ時間がかかる気配だ。

 WBを下げるなどの配置的な解決策と、ルキアンや根本凌を空中戦の的とするロングボールによる打開や右サイドで鈴木雄斗を競らせるなど手がないわけはないが、ボール保持を試合の主導権とするチームからすれば、縦を第一とするボール保持は歓迎すべき状況とは言えないだろう。

 しかし、90分間も相手がハイプレッシングを続けるわけもなく、無秩序になりがちな後半戦の終盤にこそボール保持チームの真価は問われていて、鹿島アントラーズ戦では見事に時間を味方につけるかのように大逆転に成功した。

 ゴール前での崩しではポケットを狙ったランニングをそのまま利用することもあれば、囮に使うこともある。ゴール前に枚数を動員することはできているので、あとは選手同士の繋がりを保ったままプレーをできるかどうかだろう。

 エリア内でうまさを見せながらもサイド攻撃のヘルプもできる鈴木章斗や、味方との連携を描きながら自分でも勝負ができる福田翔生と、前線に得点を決められる選手が控えていることも大きい。

 仕上げはアンカーの田中聡。前線の選手がどんどんゴール前に飛び出してくる動きがスペースメイクになり、後方から攻撃参加をしたくなる環境となっている。

 3バックの両脇とともに後方支援をしながらもボールを失った状態に備えている田中聡だが、チャンスとみればエリア付近に飛び出していき、強烈なミドルシュートやチャンスメイクは湘南ベルマーレの日常となっている。

 と長々と書いてきたが、湘南ベルマーレのボール保持のキーはビルドアップ隊だ。両脇のCBをオープンな状態にし、彼らがボールを運ぶところが素晴らしい。ショートパスだけでなく、逆サイドへのサイドチェンジもためらいもなく行うことで、相手からすれば、的を絞りにくい湘南ベルマーレのボール保持となっている。

 代えが効かないような雰囲気もあるが、控えの大岩一貴や松村晟怜も立派に役割をこなしていたので、大きな問題にはならないだろう。

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