明暗を分けた「ビルドアップ」の差
パリ・サンジェルマンの攻撃がアーセナル相手に通用しなかった理由はいくつか考えられる。
試合前からわかっていたのが、監督判断によってスカッドから外れたウスマン・デンベレ不在の影響だ。今シーズンのリーグ・アンで4得点3アシストと多くのゴールに絡んでいたウインガーがいないことで、前線のクオリティがベストメンバーと比較すると下がっていたことは間違いないだろう。
ただ、彼の不在が試合結果に影響を及ぼしたとは考えにくい。というのも、両チームの間には「ビルドアップの機能性」に大きな差があったからだ。これがチャンスメイクの質に差が生まれた最大の要因だろう。
アーセナルはGKやCBがボールを持った際にパスの選択肢をいくつか用意している。20分の得点シーンがその代表例だろう。左CBのガブリエウ・マガリャンイスがボールを持った際に、ダブルボランチの2人が相手の3トップの前後でパスの受け手に回るだけでなく、左SBのリッカルド・カラフィオーリも中盤の一角に入り、ツートップの一角で出場していたレアンドロ・トロサールが空いた左サイドのスペースに流れていた。
ガブリエウからトロサールにパスが入ると、慌ててパリ・サンジェルマンの右WGデジレ・ドゥエがプレスバックに戻ったが、ベルギー代表FWの強引なドリブルで剝がされた。この時点でパリ・サンジェルマンの守備陣は後手に回っており、最後はカイ・ハフェルツにヘディングシュートを叩き込まれた。
最後のクロス精度とスペースに飛び込むハフェルツの嗅覚は彼ら個人の質ではあるが、トロサールがファイナルサードに運ぶまでの過程はチームとして意識されたものだ。