J1昇格に近づくも「ビクビクしてる部分もある」理由
【写真:Getty Images】
「J1昇格が見えてきた? 周りの選手がどう思ってるか分かんないけど、僕の中ではもう危機感しかない。昨年の経験もあるので、今も悪い言い方をすれば、ビクビクしてる部分もある。まだ何も決まってない状況だし、何かの間違いで一瞬でひっくり返るっていうのもありますからね。
やっぱり昨年の経験はトラウマですね。追われる状況っていうのはホントに難しい。昨年と同じような状況で2度目のチャレンジができるのを今は有難く思っています。苦い記憶を払拭できるチャンスなんで、個人としてもチームとしてもビビらず、勘違いしないようにバランスを取りながら、うまく戦いたいと思います」
原はどこまでも慎重なスタンスを崩さなかった。それほどまでに1年前の失敗が心に深く刻まれているのだろう。今の清水には乾貴士、高橋祐治、山原怜音ら昨季の悔しさを知る面々が何人も残っている。そのアドバンテージを確実に生かして、ここから最後の詰めをしっかりやっていくことが肝要なのだ。
原自身も板倉滉(ボルシアMG)、冨安健洋(アーセナル)、久保建英(レアル・ソシエダ)らとともに2019年のコパ・アメリカに参戦した経験のある選手。昨年1〜6月にはスイス・グラスホッパーでもプレーしており、世界基準のレベルを熟知している。「自分はJ2を主戦場にする選手ではない」というプライドもどこかにあるのではないか。
20代半ばになった今、その底力をいかんなく発揮し、再び最高峰リーグで戦うチャンスを自ら引き寄せるしかない。今季はここまでで19試合出場とケガに悩まされた時期も少なくなかったが、その分、「もうここからは離脱できない。自分が清水を上げなきゃいけない」という強い自覚を抱いているという。
それを残り5試合で出し切り、今度こそ成功をつかむべき。横浜FC戦で原輝綺が見せたダイナミックさとアグレッシブさは、清水の目標達成の大きな原動力になるはず。彼には凄まじいラストスパートを見せてほしいものである。
(取材・文:元川悦子)