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【プレミアリーグ分析コラム】異様な試合…。なぜアーセナルは逃げきれなかった? マンCの運命を変えた一手

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

悪い流れを変えた選手交代

ジャック・グリーリッシュ
【写真:Getty Images】

 試合の潮目が変わったのは、78分のジャック・グリーリッシュの投入だろう。

 相手選手からボールを隠すことが上手いこのイングランド代表MFは、ギリギリまで相手選手を引きつけてからフリーの選手を見つけ、そこにピンポイントでパスを出すことができる。視野が広く、ドリブル、パスの技術も高いレベルで兼ね備えているからこそできるプレーで、彼以上にチームメイトがプレーしやすい環境を作り出せる選手はそういないだろう。

 単独での打開力は先発出場したドクの方があるかもしれないが、後半のアーセナルのように引いた相手にはグリーリッシュのような選手の方が活きやすい。少しでもマイナスのクロスからシュートを放つ選手たちの質を上げるには、よりフリーでシュートを打たせる状況づくりが重要で、90+8分に決めた劇的な同点ゴールは彼を投入した意味が発揮されたシーンだった。

 直前に自らの仕掛けからコーナーキックを獲得したグリーリッシュは、ショートコーナーでリスタートすると、リターンパスを受けてからボックス内へと進入。3人のアーセナルの選手を自らに釘付けしてからマイナスのコバチッチへとパスを出した。

 これによって相手の最終ラインが大きく押し下げられたと同時に3選手を引きつけていることからクロアチア代表MFに足を振る余裕が生まれ、彼が放ったシュートのディフレクトをグリーリッシュと同タイミングで投入されたジョン・ストーンズが押し込んだ。

 ジョゼップ・グアルディオラ監督の采配が的中したマンチェスター・シティが土壇場で追いついた。ただ、コバチッチやルベン・ディアスらミドルシュートを打つ役割を担っていた選手たちの質が残りのベンチメンバーを見ても解決するのは難しかったことを踏まえれば、彼らの質を上げるアシストができるグリーリッシュの投入はもっと早くても良かったと思う。

 首位を争う天王山でアウェイチームが1点のリードを得ながら退場者を出すという“いびつな試合”となったことで、試合の展開は予想もつかない方向へと向かってしまったが、両チームともに苦しい状況でライバルに“負けなかった”ことはポジティブに捉えるべきだろう。

 2月に予定されているエミレーツ・スタジアムでの同カードでは、90分間を通して11人vs11人というフェアな状況で熱戦をみせて欲しい。

(文:安洋一郎)

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