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Jリーグ 6日前

北野颯太「次はない」「俺やん」。セレッソ大阪9戦ぶりの勝利の裏側で、指揮官が求めたものは…【コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

「俺にしか言ってないやん」指揮官からかけられた言葉

「この世界で次はない。勝ち取るんだ。自分の明るい未来を勝ち取るんだ」

 小菊監督は試合前にチーム全体に向けてそう語りかけたという。一方の北野はこう受け取っている。「俺にしか言ってないやん。若手はつかみ取れって、俺やんって感じだった(笑)」。スタメンという気負いはなく、「やっとこういうチャンスが来た。楽しみでしかなかった」と久々のスタメン起用を楽しんでいた。

 ただ、対策通りにいかないのがサッカーの難しいところだ。序盤は湘南の勢いに押されて、立て続けにセットプレーを与えてしまう。そして12分、自陣左サイドで与えたFKから、鈴木章斗のヘディングシュートが決まり、先制を許してしまった。

 直近の4連敗のうちの2試合は、試合序盤に先制点を献上していた。それと同じ展開になるのかという嫌な予感も脳裏をよぎる中、セレッソの選手たちはそこで崩れなかった。ピッチ上の選手たちはリバウンドメンタリティを見せた。

「そこでチームがバラバラにならず、心が折れずに戦ったこと。そこが一番の勝因だと思います」(小菊監督)。前線からプレスをかけるという戦前の狙いを改めて確認したことで、同点ゴールが生まれる。そして、浮足立つ相手を尻目にシンプルなロングボールからレオ・セアラの力強さが全面に出たゴールで試合をひっくり返している。

 悔いが残るのは61分のシーンだった。敵陣で相手のパスをカットした北野は、そのままペナルティーエリアまで運び、勢いよく右足を振り抜いたが、シュートは右上に外れてしまう。小菊監督が「1対1を制していれば100点満点」と言えば、北野も「決めていれば今日はいい仕事ができた」と振り返る。ただ、両者ともに悔しさよりも勝てた安堵感が上回る表情をしていたように見えた。

 決定機を外した約5分後。北野はピッチを後にする。小菊監督は北野を下げて最終ラインを4枚から5枚へと増やした。これが試合終盤の鍵を握ることになる。

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