「根拠のないプライドはすべて捨ててくれ」
【写真:Getty Images】
チームを束ねるキャプテンとして見せた、毅然とした立ち居振る舞い。今シーズンに鹿島アントラーズから加入した昌子を迷わずにチームリーダーに指名。そのうえでクラブとして、そして指揮官個人として初めて臨むJ1での戦いへ、黒田監督が「彼と心中しようと思っていた」と明かす理由がここにある。
開幕前のキャンプで実施した選手間投票で、昌子はキャプテンに選出された。名実ともにリーダーとなった矢先に負傷した昌子は、古巣・ガンバ大阪との開幕戦、そしてチームがJ1初勝利をあげた名古屋グランパスとの第2節でベンチから外れている。初めて先発したのは、ホームに広島を迎えた第6節だった。
ともに無敗で迎えた雨中の一戦で、黒田監督は広島と同じ[3-4-2-1]システムを採用。いわゆるミラーゲームで臨むも前、後半に1点ずつを失った。迎えた58分。指揮官は昌子をベンチへ下げて従来の[4-4-2]に戻すも1点差に詰め寄るのが精いっぱいで、今シーズン初黒星を喫していた。
「戦術的に外されたとおそらく昌子は思いたかったはずだし、もちろんそれも一理ある」
昌子を巡る広島戦での采配をこう振り返ったことがある黒田監督は、戦術面での理由だけで昌子をベンチに下げたわけではないと、その後に昌子との間でかわしたやり取りを含めて明らかにしている。
「ラインをあげるスピードなどを含めて、あの試合でのパフォーマンスではこうだった、というものを示す映像を見せながら、キャプテンとして自分が求めているものはもっと大きいし、だからこそお前が率先してやってほしいと。あんなものでいいという基準を昌子源で作ってしまい、それを若い選手たちが見たら、このチームの成長はない、と。J1へ臨む1年目だからこそ、J1で優勝できる基準を示してくれと伝えました」
高校サッカー界の強豪、青森山田から異例の転身を遂げて2シーズン目。プロでの経験がない指揮官のアプローチとして、黒田監督は「根拠のないプライドはすべて捨ててくれ」と選手たちに言ってきた。