あえて伝えたオ・セフンへの苦言
「スパチョーク選手が速いので、ちょっと迷いましたけどね。DOGSO(決定的な得点機会の阻止)も頭をよぎりましたけど、感覚的には僕の方が先にボールに触れると思ったので」
迎えたハーフタイム。森保ジャパンに名を連ねる守護神、谷晃生が「後半も隙を見せずにいこう」と檄を飛ばした。スコアレスで折り返した後半開始早々に失点を喫し、そのまま0-1で敗れた8月11日の湘南ベルマーレ戦の二の舞を演じることだけは許されない、という危機感が込められていた。
チーム内に漂いかけていた、どんよりとした重苦しい空気を感じていた昌子も谷に続いた。
「一歩、一歩が遅いんじゃないかとみんなに言いました。前半は左サイドの(藤本)一輝からのクロスが何本かあったけど、みんなが『あっ』としている間に通り過ぎていったというか。いつもならば相手よりも一歩早く動いて、ちょっとだけ触ってゴールしていたのが見られなかったのが、すごく気になったので」
チーム全体へ喝を入れた昌子は、個人的には韓国代表FWオ・セフンに対して「冷静になってくれ」と伝えた。左タッチライン際でDF中村桐耶と競り合った39分。自身のファウルを取られたオ・セフンは、中村がユニフォームを引っ張ったじゃないか、と言わんばかりにボールを関係のない方向へ蹴っていた。
山下良美主審は注意を与えただけだったが、場合によってはイエローカードの対象になりかねない愚行。オ・セフン自身にも、チームにもマイナスになるとの思いから、あえて苦言を呈したと昌子は言う。
「セフンがすごくフラストレーションを溜めていたのは、みなさんも見ていてわかったと思う。それでもボールを蹴った行為を見せているようでは、うまくいっていないと相手に伝えているようなものなので」