V・ファーレン長崎はボディーブローのように…
11分、CKを得るとキッカーは安部。左足から放たれたボールは最前線のターゲットマンでもあるフアンマの頭に合い、クロスバーに直撃。ゴールとはならなかったが、直後に澤田崇が決定機を迎えるなど、ここから拮抗した展開となり長崎もチャンスを作れるようになっていく。
そして38分、FKから青木義孝のクロスを澤田がファーサイドから折り返し、マテウスが左足でシュート。巻いたボールがネットを揺らし、長崎が先制に成功した。
ただ、試合後に「苦しい前半でした」と下平監督が明かしたように、決して順調な45分間ではなかった。ハーフタイムには中央を絞るよう指示を送り、引き続きロングボールを続けるよう促す。この2つの指示が的中。いわきの中央を使う攻撃を封じて速攻を減少させ、ロングボールを送り続けたことでボクシングのボディーブローのようにじわじわといわきのDFラインを押し下げることに成功。中盤にスペースができ始める。
ここから、堅実にボールを展開していた安部の存在感はさらに増した。72分にCKを得ると、今度はヴァウドの頭に合わせる。GKが反応できないシュートはDFがクリアしたものの、再度CKを得る。三度安部が精度の高いボールを送ると、今度はフアンマが競り勝ち、こぼれ球を田中隼人が左足でプッシュ。直前に投入された田中は、これが嬉しいプロ初ゴールとなった。
冒頭の90分のシーンでも決定機を作った長崎は勝利しただけでなく、第26節以来のクリーンシートを達成。下平監督も「後半の立ち上がりに失点することが多く、それで勝ち点を落とした試合も結構あった。後半が課題だとみんなで共有して修正したり、トライしてきましたけども、後半の入りが悪かったり、後半に失点してしまったり。それが今日は後半もしっかり得点できて、さらに途中から入った選手たちが上手くゲームをコントロールしてくれた」と評価する一戦となった。
久しぶりの勝利とあって、試合後は長崎の選手たちに笑顔が溢れた。もちろん安部もその中の1人。弾けんばかりの笑顔を見て、以前、安部がファンサービス時に常に笑顔であることについて何気なく尋ねた際の返答を思い出した。