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【アーセナル分析コラム】なぜ危機的状況でトッテナムに勝てたのか。ウーデゴール、ライス不在で見せた“ごまかし”と工夫とは

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

堅守で乗り越えた試練

 昨季リーグ最少失点の堅守を築いたディフェンス陣はこの試合でも健在だった。


 注目すべきは、彼らが攻撃的なディフェンスを見せていたことである。ローブロックを敷いて耐える時間帯が長く、チームメイトは守備的なプレーを強いられていたが、マガリャンイスとウィリアム・サリバのセンターバックコンビはいつも以上に攻撃的に振舞っていた。

 特に相手にとって大きな脅威となっていたのが、アーセナルの組織的なプレッシングである。ジョルジーニョが自分のマークを捨ててジャンプすると、これをスイッチにしてサリバは6番の位置まで上がって相手選手を捕まえていた。最終的には前線4枚が最終ラインを監視する形が完成し、これがゴールキーパーからのビルドアップを徹底するトッテナムのサッカーにとても効果を発揮していた。

 残念ながらこれらのプレーはゴールに直結しなかったが、最後までトッテナムの攻撃を跳ね返し、苦しめ続けたからこそ、試合はアーセナルのものとなっている。

 MVPはゴールを決めたマガリャンイスで間違いないが、彼と並んでユリエン・ティンバーのパフォーマンスも素晴らしかった。

 23歳のオランダ代表は守備面で完璧なプレーを見せており、対峙したブレナン・ジョンソンに自由を与えず、左サイドを封鎖していた。また、冨安健洋やオレクサンドル・ジンチェンコとは異なり、中盤で中継地点となるのではなく、その1つ向こうの前線で攻撃に厚みを作る役割を果たしていた。ティンバーの存在はライスに代わって左サイドからの攻撃にダイナミズムをもたらしていたと言っても過言ではない。

 総じて、この試合の主役はアーセナルのディフェンダーたちである。90年代後半に鉄壁を築いた「フェイマス・バック4」を彷彿とさせるパフォーマンスだった。ウーデゴールをはじめとする絶対的主力を欠いた中でも勝ち点3を奪えたという事実は、チームに大きな自信を与えるだろう。

(文:竹内快)

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