サガン鳥栖の隙「事前の分析のなかで…」

「ちょうど間が空いていたので、というだけですね。あとは事前のスカウティングで、リスタートのところ、という話があったので。そういう分析というか、チームがそういうものを提示してくれていたので、それがうまく出たのかなと思いました。（鳥栖に）隙ができるというか、チャンスがあるというところですね」

　大島がボールを託した、キャプテンのMF脇坂泰斗がもう少し詳しく振り返ってくれた。

「事前の分析のなかで、鳥栖さんがここ数試合、リスタートの対応が少し遅い、というところがまずあった。なので、スローインや直接フリーキックのような場面では常に準備をしていました」

　ボールが完全に止まっている状態にあれば、相手チームの選手がボールから10ヤード（約9.15メートル）以内にいても、直接フリーキックからのクイックリスタートが認められる。

　そして大島の前方、距離にして3メートルほどの場所にいた鳥栖のDF原田亘とMF中原輝も、ノーファウルを主張する日野に同調するように、主審へ向けて両手を広げて抗議するポーズを取っていた。

　だからこそ、大島がクイックリスタートを選択するとは、思いもよらなかったのだろう。ボールは棒立ち状態だった原田と中原の間をすり抜け、その後方にポジションを移してきた脇坂のもとへとわたった。

　ここまでの数秒間で、実は「ひょっこり」が発動されていた。鳥栖に対するスカウティングを共有していた脇坂が目を細めながら、大島と以心伝心のホットラインが開通していたと明かす。

「ボールが来るかなと思って、ひょっこりと顔を出したタイミングで僚太くんと目が合いました」

　まったく反応できなかった原田と中原を含めて、鳥栖の選手たちが後手に回る。このとき、大島と脇坂の他にも、ゴールまでの青写真を共有していた川崎の選手たちがいた。脇坂が続ける。