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Jリーグ 1週間前

「心のどこかで…」横浜F・マリノス4番手GKが明かす入り混じる感情。寺門陸、デビューまでの3年7か月を追う【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤井雅彦 photo by Getty Images

寺門陸を大きくした2つの経験

 公式戦出場0試合に終わった1年目でプロの水に慣れ、プロデビューを果たした2年目はリーグ戦6試合、3年目はリーグ戦11試合出場と貴重な経験を積んだ。順風満帆とはいかずとも、着実に階段を上がっていった。

 3年間でリーグ戦17試合という数字は多いとは言えないかもしれないが、日々の鍛錬がプロサッカー選手としての礎を築いていく。元日本代表GKの土肥洋一氏を師と仰ぎ、細部にこだわりながら心身ともに鍛えられた。

 サッカーだけに集中できる環境が、寺門をひと回り大きくした。1~2年目にチームメイトと一緒に住んでいたシェアハウスから最寄りのコンビニまでは徒歩で約30分。長閑な環境が成長を促し、自炊にも意欲的にチャレンジする。プロ入り時に72~73kgだった体重は1年後には79~80kgまで増えていた。

 試合経験と人生経験。その2つを自信として備え、憧れの横浜F・マリノスへ帰還した。

 今季開幕時の立ち位置は4番手GKだった。ポープ・ウィリアムが主戦を務め、ベテランGK飯倉が控える。同じアカデミー出身の白坂楓馬もいる。その3選手は序盤戦の段階で公式戦に出場したのだから、心中穏やかではいられない。

 だが、焦ってもチャンスが巡ってくるわけではない。それを理解している寺門は「今シーズンほぼ試合に絡めていない中で、山口での1年目のようにこのレベルに自分が達していないだけ、実力が見合っていないだけだと思っていた。そこを目指してコツコツとやり続けたし、いつチャンスが来るのか分からない中で、転がってきたチャンスを掴めるようにと常に考えて練習してきた」。松永成立GKコーチと榎本哲也アシスタントGKコーチの指導を受け、自分自身を磨いていく。いつか訪れる出場機会のために、1日の練習と1本のシュートに全神経を注ぐ。

 そんな日常が、彼をマリノスデビューへと導いた。ポープが負傷欠場し、飯倉が負傷交代というアクシデントが重なった結果だとしても、約7か月の歩みは間違っていなかった。

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