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Jリーグ 2週間前

「末恐ろしい36歳だなと」清水エスパルスを救った乾貴士の一瞬の“判断”。高速ドリブル中に考えていたこととは?【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

乾貴士は「末恐ろしい36歳だなと」

清水エスパルスの秋葉忠宏監督
【写真:Getty Images】

「うまくブラガを使えたし、そのブラガがしっかりと決めてくれたのでよかったです」

 さらりと振り返った乾がブラガに感謝する。しかし、決して簡単なプレーではなかった。自陣の中央から長崎のペナルティーエリア付近まで、ドリブルで突破した距離は実に60メートル近くに達していた。さらにトップスピードに乗った状態で、右足から優しいパスをブラガが走り込むコースへ送っている。

 最終的に1-1のまま引き分けた試合後の公式会見。キックオフ時の気温28.4度、湿度66パーセントと高温多湿の条件下で、先発時のトップ下から、北川がベンチへ下がった86分以降は最前線でフル出場した乾へ、清水を率いる秋葉忠宏監督は「末恐ろしい36歳だなと思っている」と最大級の賛辞を送った。

「あれだけ長い距離をドリブルした後だと、丁寧なボールはなかなか出せないはずなのに、最後のブラガへのパスの絶妙な力加減、スピード、強弱の付け方。左側を走っている航也もいたし、本当にすべてが噛み合って、カウンターで数的優位を作るという素晴らしいシーンを生み出せていた。ビハインドされている状況で、われわれが狙っていた通りのカウンターから得点した選手たちを本当に褒めてあげたい」

 同点とした場面を笑顔で振り返った指揮官は、ベンチ入りした18人の選手のなかで最年長となる乾が、90分間を通してピッチ上で放ち続けた存在感を、こんな言葉を介して表現している。

「まだまだ残暑がきつい条件のなかで、最後まで相手の脅威になり続けていた。そして守備でもしっかりと献身的に方向づけをして、プレスも怠らない。本当に気の利いたプレーをしてくれる存在です」

 J1への昇格をかけたJ2の上位戦線。台風10号の影響で徳島ヴォルティスとの前節が中止になった清水は、消化試合数がひとつ少ない状況で、首位の横浜FCに勝ち点4ポイント差の2位と自動昇格圏をキープ。3位の長崎との勝ち点差も8ポイントのままとして、いよいよ胸突き八丁の終盤戦に突入する。

 中止となった徳島戦がある意味で休養になったと受け止めている乾は、夏場の戦いを「いやいや、しんどいですよ」と苦笑とともに振り返りながら、残り9試合へ向けて決意を新たにしている。

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