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「リバプール・分析コラム」快勝のマンU戦で遠藤航の居場所はなくなった? 予想を上回ったフラーフェンベルフの凄さ

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

懸念だった守備でも抜群の存在感

 こうした保持の局面での高い貢献度は前節までも評価されていた。一方で相手が格下だったこともあり、一部ではマンチェスター・ユナイテッドとの今節に向けて、守備時に「フィルター」の役割を担えるのか懐疑的な声もあった。

 結論から言うと、フラーフェンベルフの守備時の振る舞いは素晴らしかった。このオランダ代表MFは遠藤のように狙った相手選手からハードなタックルでボールを奪う「潰し屋」タイプの選手ではない。実際にマンチェスター・ユナイテッド戦ではハードなタックルを相手に見舞うことはほとんどなかった。

 それでも読みの部分が冴えわたっており、データサイト『Sofascore』によるとチーム最多となる4つのインターセプトを記録。その中でも20分と22分にみせたインターセプトは素晴らしく、マンチェスター・ユナイテッドDFリサンドロ・マルティネスが中盤の選手に出した縦パスをカットし、そこからショートカウンターを発動させた。35分に生まれた先制点の場面もフラーフェンベルフがカゼミーロのパスをカットしたところから始まった。

 以前は課題とされていたネガティブトランジションでの働きも素晴らしかった。ストライドが大きいことから帰陣のスピードも早く、セカンドボールの回収も見事。少しでも相手がボール処理を誤ればリーチの長い足でボールを奪い、リバプールが得意とする速攻の起点となっていた。

 彼が攻守に担う役割をベンチに座っていた遠藤と怪我で離脱中のカーティス・ジョーンズが代役として担えるだろうか。スロット新監督の下で彼らの能力が伸びる可能性も十分にあるが、フラーフェンベルフはそもそもの素材が違う。このポテンシャルを伸ばすことができる指揮官との出会いでオランダ代表MFは一躍ワールドクラスの仲間入りを果たすかもしれない。

 このフラーフェンベルフを筆頭に現在のリバプールは代役が効かない選手が多く、現時点では選手層に若干の不安がある。それは早々に勝利が決定的となっていたマンチェスター・ユナイテッドとの試合でもスロット監督が、チームの構成が変わりかねないコアなメンバーをベンチに下げなかったことが証明している。

 しかし、素材型だったフラーフェンベルフをあっという間に主力選手へと引き上げた新指揮官の下であれば、同じく判断に課題を残しているとされるダルウィン・ヌニェスや新加入のフェデリコ・キエーザをさらに一段階も二段階も成長させることができるかもしれない。そうすれば計算できる選手が増え、選手層に厚みが増し、スロット監督の理想のスカッドへと近づいていくはずだ。

 まだ第3節終了時点のため時期尚早ではあるが、プレシーズンから現在までの過程を見る限りはリバプールが今シーズンのプレミアリーグの主役になる可能性がある。ユルゲン・クロップの後任というプレッシャーさえはねのければ、トロフィーも獲得できるのではないだろうか。

(文:安洋一郎)

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