怪我がちな選手が多い左サイド
ほとんどの試合でFWブカヨ・サカ、MFマルティン・ウーデゴール、DFベン・ホワイトのトライアングルが形成される右サイドとは異なり、左サイドは試合によって人選がバラバラだ。これにより昨季は時折、機能不全を起こしていた。
特に左SBのポジションは怪我がちな選手が多く、昨季、そして今季とオレクサンドル・ジンチェンコ、冨安健洋、ユリエン・ティンバーなどが代わるがわる出場している。ブラントン戦においても、ティンバー→リッカルド・カラフィオーリ→ジンチェンコと時間帯によって左SBの選手が変わった。
このような左サイドの慢性的な問題を考慮すると、マルティネッリを先発させ、トロサールをベンチスタートにしておくのが最良だ。すなわち、負傷や戦術的な理由で試合ごとに、試合途中に選手が交代することも多い左サイドでは、様々な状況に柔軟に対応できるトロサールが重要な「切り札」「調整役」となる。
さらに、今後はウインガー色の強いマルティネッリが活躍しやすい環境が整うことが予想される。新加入のMFミケル・メリーノは左インサイドハーフ(IH)を務めることが濃厚であり、現在同ポジションを担当するライスとは違って左利きである。メリーノを左IHに起用した場合はワイドに張ったマルティネッリに対して斜めにパスを出しやすくなるため、なかなか良い形でボールを受けられず、仕掛けが不発に終わりがちだったマルティネッリは息を吹き返すかもしれない。
選手の心情も考慮したマネジメントはとても重要であるし、インパクトを残し続けるトロサールの先発起用は妥当である。しかし、今後も一貫してマルティネッリを先発起用し、相手を機動力で翻弄した上でトロサールの質で仕留めるという形を継続した方が、”両者とも”輝く試合が多くなるだろう。ミケル・アルテタ監督にとっては大きな悩みどころになるが、健全でハイレベルな競争が行われているという点では歓迎すべきことである。
(文:竹内快)