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Jリーグ 4週間前

「僕らはもう一皮むけないと…」徳島ヴォルティス、永木亮太はもがきながらJ1を目指す。追い風となる戦友との再会【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

追い風となった岩尾憲の加入「運命的な…」

 当時J2の湘南ベルマーレでプロキャリアをスタートさせ、鹿島アントラーズ、名古屋グランパスなどトップクラブを渡り歩いてきたベテランボランチが徳島にレンタルで赴いたのは1年前の8月。移籍直後にベニャート・ラバイン監督が解任され、吉田監督が就任するという難しい時期で、永木自身も豊富な経験値を駆使して再建に奔走した。

 迎えた今季。湘南から完全移籍に移行し、キャプテンに就任。2021年以来のJ1昇格を目指してスタートしたが、チームは昨年以上の苦境を余儀なくされ、彼自身もいかにして周囲を統率すべきか相当に悩んだようだ。

「前期は本当にいろんなことがあって、自分自身ももがいてきた」と本人も言う。それでも同じ30代の柿谷や渡らとも協力しつつ、前向きなムードを作ろうと努め、実際に結果もついてくるようになった。

 そんな永木にとって追い風となったのが、2017〜2021年まで徳島でキャプテンを務めていた岩尾の復帰だ。奇しくも2人は88年生まれの同い年。しかも2011年に大卒で湘南入りした同期でもある。ルーキーイヤーの開幕から坂本紘司(現湘南社長)やハン・グギョン、遠藤航(リバプール)らとともにレギュラーと位置付けられた永木とは対照的に、岩尾は試合に出られず苦しんだ選手だったが、ともに切磋琢磨した日々は大きな財産となったはずだ。

「プロ入りした当時に一緒にやった憲とまたここで一緒にやれるっていうのは運命的なものも感じていますし、徳島を1回離れて憲が経験したものも感じながらやれています。彼が来たことで僕自身の負担も減った。そこは本当に有難く感じています」としみじみ言う。

 ただ、同じボランチということで、ポジション争いを強いられる間柄なのも確か。今の徳島には前半のキーマン・児玉、横浜FC戦に出ていた杉本太郎、8月にジュビロ磐田から加入した鹿沼直生ら数多くの選手がいるだけに、2人とも先発が保証されているわけではない。しかしながら、永木と岩尾がスタメンでコンビを組んだ仙台、愛媛、山形と3試合はまずまずの結果が出ている。増田監督も一定の評価をしているに違いない。

「足元のうまい憲が入ってきて、本当に試合が落ち着くし、リズムも作れるし、精神的にも大きい。まだ一緒に出ている試合数は少ないけど、いい関係でやれていると思います。

 この3試合は勝ち切れなかったですけど、1回リセットして週明けの練習からまたしっかりやっていくことが大事。僕らはもう一皮むけないといけないし、チャンスがある限り、前を向いてやっていきたいと思います」

 残されたゲームは10試合。暫定11位の徳島と同6位の岡山のポイント差は9と厳しい状況なのは間違いないが、ここから連勝街道を歩めれば、何かが起きるかもしれない。そのためにも永木が岩尾とともに持てる経験値の全てを注ぎ込むことが肝要だ。

 背番号54の今後の一挙手一投足がチームの成否を左右すると言っても過言ではない。

(取材・文:元川悦子)

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