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セリエA 3か月前

「心を動かされた」驚きでしかないコモのビッグプロジェクト。「ディズニーのような組織に…」セスクと歩む覚悟の1年【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

驚きしかない、ヨーロッパの舞台とは無縁のクラブを…

 この静謐で壮麗な景勝地がざわついたのは、2019年4月。ロンドンを拠点とする英国企業のSENTエンターテイメントが、コモの経営権を取得したからだ。この企業を背後で操るのが、ハルトノ家。インドネシア一番の富豪で、84歳マイケル・ハルトノと、クラブの会長を務める83歳のロバート・ブディ兄弟の保有資産は、昨年12月の時点で480億ドルに達していた。たばこの製造販売で財を築き、金融業や不動産開発も営む、インドネシア3大財閥の1つ、ジャルム・グループを率いる億万長者だ。

 クラブは、2016年の破産宣告を受け、セミプロリーグのセリエDからの再スタートを強いられていた。2017年には、マイアミを拠点とする起業家のマッシモ・ニカストロが会長の座に就いたが、世界長者番付にも名を連ねる資産家が、1907年創設以来、トップリーグの在籍は15回、最高位は1950/51シーズンの6位とヨーロッパの舞台とは無縁のクラブを買い取ったのだから、驚きしかない。かくして、人口8万人のコモの町は、蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。

 新生コモは、ハルトノと同郷のエリック・トヒル政権下にあったインテルでチーフ・レベニュー・オフィサー(CRO)を担ったマイケル・ガンドラーを新しい最高経営責任者(CEO、2021年2月に退任)に迎えた。このアメリカ人CEOの主導の下、クラブはインフラの整備に着手。新トレーニングセンター建設のために、300万ユーロ(約4億8000万円)が投資され、2021年6月には、コモ市から南に25キロにあるモッツァーテ市に作られた。

 一向にプロジェクトが進まない、従来のイタリアのクラブ経営では考えられない、驚くべきスピードだ。また、本拠地、シニガッリア・スタジアムの芝も張り替えられ、クラブには、新たに50人ものスタッフが採用されている。さらに、オフィシャルストアをコモ市内のドゥオーモ(町の一番重要な教会)の近くにオープンし、マーチャンダイジングにも力を注いでいる。

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