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【リバプール・分析コラム】なぜ遠藤航の序列が下がったのか。新監督が求めるアンカー像とは

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

新体制で見られたアンカーを経由する得点パターン

 60分と65分に生まれたどちらの攻撃もフラーフェンベルフを経由している。



 先制点の場面では、途中投入となった右CBのイブラヒマ・コナテがボールを受けると、フラーフェンベルフが左サイドから彼のいるサイドに動き直してパスを引き出した。そこからモハメド・サラー、トレント・アレクサンダー=アーノルドとテンポよく繋がり、最後はディオゴ・ジョタがネットを揺らして、前掛かりとなった相手の裏を取るお手本のような疑似カウンターが決まった。

 65分の2点目の場面では、フィルジル・ファン・ダイクがフラーフェンベルフに縦パスを当て、それをダイレクトで戻してからオランダ代表DFが得意の裏へのフィードを通してサラーのゴールを演出した。

 2点目のシーンのように、裏へのロングボールを狙う場面であっても一度は中盤を経由している。リスクを考えれば、そのまま裏に蹴り出すのが最善策となるだろうが、スロットの戦術ではCBとアンカーの間でのパス交換をすることで、一度相手の守備の矢印を前向きにさせている。ミスをしてボールを失う可能性があってもこれを徹底している。

 スロット新監督が理想としている、狭いスペースだろうが関係なしに積極的にボールを受けに行き、なおかつ失わないことが求められているアンカー像のタイプとボール奪取を最大の持ち味としている遠藤のタイプは現状では合致していない。

 現在地ではフラーフェンベルフの方が前にいることは間違いないが、かと言って遠藤にチャンスが訪れないわけではないだろう。残りの移籍市場で新戦力を獲得した場合は変わってくるが、ボールを保持する強豪との試合となれば、リバプールが最終ラインから組み立てる機会は減り、逆に前線からの守備が重要となる可能性がある。

 そういった際に存在感を発揮できるのは、フラーフェンベルフではなく遠藤だろう。前線からの連動したプレスが機能すれば、決まった守備範囲で驚異的なボール奪取力を発揮する日本代表MFが活きてくる可能性がある。新指揮官の戦術的なオプションの一つになれるかどうかが、今夏のリバプール残留の最低条件となるだろう。

(文:安洋一郎)

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