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Jリーグ 1か月前

京都サンガは何が変わったのか? 相手を混乱に陥れるプレッシングの制度設計と機能不全を解決した方法は…【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by Nobuya Akazawa|J1全部見るマン photo by Getty Images

トランジションの再機能をもたらした変更とは

 完全に攻撃の形を取り戻したかというとそうではないかもしれないが、確実に良い方向に向かっている。先述した準備時間については、個々人の意識で大きく変えることが可能になるものだ。そしてチーム全体としてSBを安直に高い位置に押し出すことを自重したことも大きい。だから2-1の土台から4-1の土台になっているシーンがよく見受けられる。こうしたことによってSBが低い位置でボールを受けられるので、2ndラインから相手を引っ張り出すことが可能になった。


 上のパスを送り込む場所もSBとCBの間になっている。CFやWGが上のパスを引き取ることが多くなるので、トランジションもサイド2レーンで発生することが多くなった。

 上のパスを送り込む場所が変わったことで、トランジションが機能するようになった。IHの移動距離が短くなったことでトランジションに注力させることが可能になった。だからこそネガティブ・トランジションで優位に立てるようになり、ダイレクトサッカーを押し出せるようになった。また、SBで相手を引っ張り出したときには、IHが外に流れながら逆のIHが中央まで入り込むことも多くなる。これで下からの前進経路も確保している。

 IHとSBとWGのローテーションからWGとIHの入れ替わりに役割を少なくしたことで、準備の時間を短くしたことも安定した大きな要因だろう。

 もちろん、課題はまだある。たとえば25節の名古屋グランパス戦の前半にそれは見受けられた。土台の部分に全てマーカーを早めにつけられてしまった京都は前進を十分に行うことができず、前方しかも中央へ蹴り出す他ない状況になった。

 CBとDMFをはめられてしまうと、GKが蹴り出すことが多くなる。トランジションに人数を割きたくなるので、自然とSBが高い位置を取っていく。作り出したカオスのところでボールを回収できればそれでいいのだが、できない場合は苦しんでいたときと同様の文脈で守備を行わないといけなくなる。

 土台をはめられたときの前進方法という課題を、京都はどのように解決してくのか。ここから先、残留に向けて重要なキーファクターになりそうだ。

(文:Nobuya Akazawa | J1全部見るマン)

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【了】

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