「意識していたら入っていました」盟友から奪った完璧なゴール
敵陣中央の左サイドで、DF三浦颯太がFW遠藤渓太に倒されて獲得した直接フリーキック。左利きの三浦がキッカーとしてスタンバイするなかで、高井は相手の両センターバック、土肥幹太と岡哲平にはさまれるようなポジションを取っていた。もちろん、このときから駆け引きははじまっていた。
三浦がインスイングのクロスを放った瞬間に、高井は助走をつけながら、自身から見て左側にいた岡の眼前に回り込んだ。そして、迷わずにダイブすると、空中で身長192cm体重90kgの巨躯を思い切り伸ばす。後手を踏んだ状態になった186cm83kgの岡は、もはやこの時点でなすすべがなかった。
まだ記憶に新しいパリ五輪をともに戦った盟友、FC東京のGK野澤大志ブランドンも飛び出せない。高い打点から放った、ダイビングヘッドからの完璧なゴールを高井は独特の言葉で振り返っている。
「うまく相手選手の間に入り込めて、枠に入れることだけを意識していたら入っていました」
さらに「ものすごいジャンプ力だった」と問われた高井は、ちょっぴりはにかみながらこう続けた。
「そこまで難しいシュートではなかったので、はい」
敵地・駅前不動産スタジアムに乗り込んだ、5月15日のサガン鳥栖戦以来となる2ゴール目。もっとも、右コーナーキックのチャンスでニアに回り込み、頭で豪快な先制ゴールを決めたこの試合は、前半のうちに連続で3失点を喫するなど、最終的には2−5のスコアで屈辱的な逆転負けを喫していた。
「勝利に貢献できる得点が一番ほしかったので、よかったと思っています」
ダメ押しとなった自身のゴールを喜んだ高井は、パリ五輪を戦ったフランスから帰国後で初めて出場した一戦となった、3万7452人の大観衆が詰めかけた多摩川クラシコを「楽しくできた」と振り返った。