「練習から『ぬるいプレー』っていうのを出させないように…」
その後の前半はほぼ互角の展開。宇佐美と細谷という両エースが積極的にフィニッシュに持ち込むが、得点には至らない。
そしてスコアレスで折り返した後半。7日の浦和レッズ戦が雷雨で中止になった影響で体力的にやや余裕のある柏の方がギアを上げてくる。6分には細谷が思い切ったシュートを放ち、24分には左サイドを駆け上がったジエゴの折り返しに途中出場の木下康介が飛び込むが、いずれも一森が立ちはだかる。
この後も複数の決定機を阻止。絶対的存在感を示した33歳のGKのおかげで、ガンバは0-0で勝ち点1を死守することができたのだ。
「一森効果? いやいや、そんなことはないですし、みんな誰1人サボることなく守備をやってくれるので。僕たちも後ろの人間として、攻撃陣に優位性も持ってボールを運びたいと思っていたんですけど、ここ3試合、得点が入っていないという状況はもっと重く受け止めないといけないと思います」と本人は自身のパフォーマンス以上に、チームとして勝ち切れていないことを深刻に受け止めている様子だった。
確かに、今のガンバは湘南ベルマーレ、FC東京、柏と順位的に下の相手からゴールを奪えず、勝ち点3を得られていない。気づけば、鹿島アントラーズに加え、サンフレッチェ広島にも抜かれ、4位に落ちてしまっている。
それでも何とか踏み止まれているのは、総失点18という堅守があるからに他ならない。
「もう俺のおかげじゃなくて、シン(中谷)とか前半戦は(三浦)弦太とかがすごい頑張って流れ作ってくれたんで、すごい自信を持ってやれている。それが失点の少ない一つの大きな要因だと思います。
練習から『ぬるいプレー』っていうのを出させないように声掛けとかができてますし、まだ甘いんですけど、1つの形になりかけているのかなと思います。でも、まだまだ組織として強固なものを築けてるわけでもない。スキもあるんで、少しでも気が緩んだらドバドバと失点してしまいかねない。失点数とかシーズンが終わった時に評価したいなというふうに思います」と彼はどこまでも謙虚な姿勢を貫いているのだ。
その人間性は苦労と努力を重ねたキャリアから来るものなのだろう。