「ちょっともったいなかった」見据えているのはあくまでリーグ優勝
9人で戦う非常事態を受けて、吉田監督はシステムを[4−3−1]に変更。右サイドバックで先発していた菊池流帆をセンターバックへ、武藤を右サイドバックへ配置転換した。さらに68分には武藤に代えて、右サイドバックを主戦場とする広瀬陸斗を投入するも、71分にFW山田新に追加点を奪われた。
78分には大黒柱の大迫に代えてMF山内翔を、井手口に代えてMF井出遙也を投入。最前線にパトリッキを置き、その背後で3人の中盤、山内、鍬先、そして井出が左右へ何度もスライドを繰り返し、圧倒的な数的不利を補う戦い方を選んだ。しかし、85分には再び山田にゴールを奪われてしまった。
中断前の最後の試合だった、名古屋グランパスとの前節に並ぶ今シーズンのワーストとなる3失点。名古屋戦は3−3で引き分けたものの、川崎には完膚なきまでの完敗を喫した。山川は「人数に関係ないセットプレーで失点したのが、ちょっともったいなかった」と、家長に喫した先制点を悔やみながらこう続けた。
「3失点してしまいましたけど、4失点、5失点と重ねなかったところは、今後のリーグ戦の最後の順位で得失点差のところに関わってくる可能性もあるので、その意味ではできることはやれたと思う」
出場停止になるトゥーレルに代わり、センターバックで出場する可能性のある菊池も「もう終わったことなので取り返せないし、切り替えてやるしかない」と前だけを見すえながらこう語っている。
「(9人で戦うのは)初めてでしたけど、やはりきついな、という感じですね。幸いにも首位の町田が引き分けてくれたし、次から勝っていけばいい話なので、全員で切り替えて1試合、1試合勝っていくだけです。僕自身はどこで出るかは正直わからないけど、トゥーレルの分も七聖の分もしっかり勝ちたい」
順位をひとつ下げて5位に後退した神戸は、中断期間をはさんだ直近の3試合で2分け1敗と思うように勝ち点を伸ばせていない。中3日の11日には敵地・日産スタジアムで横浜F・マリノス戦が待つ。
キャプテンのMF山口蛍、不動の右サイドバック酒井高徳を怪我で欠く陣容に、ネット上を騒然とさせた一発退場を命じられた川崎戦で完敗した心理的なショックと、飯野とトゥーレルを出場停止で欠く苦境も加わった。FC町田ゼルビアとの勝ち点差は8ポイント。連覇へ向けて神戸が正念場を迎えようとしている。
(取材・文:藤江直人)