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日本代表 1か月前

「ボコっと前に…」平河悠はトップのドリブラーになれる身体つき。藤田譲瑠チマとも共通する沈むバネによる「動きの効率性」

シリーズ:コラム text by 水野裕介 photo by Getty Images

「強くて正確なキック」を可能にするには?

「伊東選手のクロスは骨盤の回旋と連動して蹴り足を内側に振り抜いています。藤田選手のインサイドキックは、ボールとのインパクトの手前で上半身の姿勢を保持しながら、骨盤の回旋を止めて蹴り足を走らせるという蹴り方です。どちらも骨盤の動きを利用して身体の重さをしっかりと蹴り足に乗せることで、ボールとのインパクトを強くしています」


「ボールが身体の真下にあるときは、蹴り足をテイクバックすることで骨盤の回旋を大きくします。ボールが身体の前にあるときには、上半身を後ろに倒す動きが入ります。どちらの状態のときでも、軸足の膝を抜くタイミングを微調整することで、ボールへのインパクトを一定にできるため、あらゆる状況で強く正確なキックを可能にしています」

 この特徴は先日現役を引退したトニ・クロースのキックと似ている部分がある。味方の足元にすっと入るインサイドパスはもちろん、ゴールにパスをするかのようにインサイドで打つグラウンダーのシュートも骨盤の回旋を止めたキックである。

“上半身の姿勢の良さ”という言葉が何回出てきたか分からなくなるくらい、サッカー選手にとっては大切なものなのだ。サッカーは足でボールを扱うスポーツである。もちろん足元の技術は必要不可欠なものだが、足も含めた身体全体を自在に操作するために、どれだけ上半身にフォーカスをあてることができるか、そして「基礎体力」を上げることができるかが、トップのサッカー選手への道を切り開くことになるだろう。

 著書内の三浦氏の言葉を借りれば、「基礎体力」はサッカーのパフォーマンスレベルが高い選手の共通点を落とし込むためのもので、ひとつの「型」に過ぎないと言う。それぞれがこの「型」と自分とを照らし合わせて研究することで、より自分に合った「型」を見つけてほしいという思いが込められているのかもしれない。

 サッカー選手以外でもそうだ。学校や会社で先生・上司からの「型」をそのまま愚直に実践することも大切なことだが、自分なりの解釈でより自分に合ったものに変えていくことが、その人の個性となるのだ。

 そんな「型破り」な人間こそが、トップパフォーマンスを維持できる自立した選手・人間なのかもしれない。

(文・水野裕介)

プロフィール

三浦哲哉(みうら・てつや)
1980年4月25日生まれ、岩手県出身。理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。大船渡高校、順天堂大学、専門学校社会医学技術学院卒。整形外科クリニックでの理学療法士業務と並行して、サッカーを中心にトレーナー活動を経験。タマリバクラブ(ラグビー、2005〜08年)、慶應義塾体育会ソッカー部(10〜20年)、全日本大学選抜(13〜15年)、ユニバーシアード男子日本代表(15年)でトレーナーを務めた。

書籍情報

『サッカーフィジカルのプレーモデル』

三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修
定価:2,310円(本体2,100円+税)
これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型
世界で活躍するトップ・オブ・トップのサッカー選手の動作的特徴として、「スプリント」「減速・加速」「方向転換」の速さが挙げられる。それらを支えているのが、「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」の3つのバネである。また、身体的特徴として、「上半身の姿勢の良さ」「腹~腰回り、下腹部の筋群の発達」「自由度の高い股関節」がある。本書では、現代サッカーを制するために必要不可欠な3つのバネの作り方を中心に、中学生年代から大学生年代かつプロ選手まで適用できる、これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を提示する。

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【了】

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