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Jリーグ 1か月前

「踏んだり蹴ったり」浦和レッズは堅守だった昨季から何が変わったのか? 安定しないプレッシングの設計図【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

ロングボールの二択。成立させるメカニズム

 浦和はボール保持の配置を[4-3-3]を基本としているため、今季の序盤は[4-3-3]のままプレッシングをかける場面が見られた。昨季まではボールの位置を中心とする[4-4-2]のゾーンディフェンスだったため、少しの違いが見られている。配置の違いよりも大きな変化はハイプレッシング志向という点だろう。


[4-3-3]を基本とする場合は、インサイドハーフを前に出すか、ウイングに外からプレッシングをかけさせることで、配置のずれに対応することが多い。浦和は前者であることが多いが、そのまま1トップで追わせることもある。いまいち安定したプレッシングの設計になっていないことも相まって、結果的にミドルプレッシングに移行したり、相手の攻撃を加速させるきっかけとなったりと、踏んだり蹴ったりとなっている。

 現代のサッカーにおいて、人を基準とするプレッシングが流行ってきている。相手を容易にフリーにさせないことで、「相手からボールを奪う」と「ボールを前進させない」を同時に実行することが狙いだ。ただし、90分を通じて、人を基準とする守備を実行することは困難である。それは相手に押し込まれたときに、ゴールを守ることに守備の目的が変化するからだ。

 人基準からゴール基準に守る目的をぱっと切り替えることは難しい。特に浦和の場合は、相手陣地での振る舞いでは慣れ親しんだ[4-4-2]を採用するように変化してきたが、押し込まれたときは[4-3-3]で振る舞うことがある。また、ボールを基準にするゾーンディフェンスでは、ボールサイドよりも下がることは当然の理だが、人を基準にする守備の場合は、自分の担当が上がらない場合は、自分は下がらなくてもいいという理屈が一応は成り立つわけとなる。

 自分たちのボール保持で実行しているように、柔軟な立ち位置で攻めてくる相手が多い環境のなかで、目の前の選手を押さえていれば大丈夫なんてことはない。守備の基準点を失っている選手もいれば、1人の選手が複数の相手を抱えている場合もある。ボールサイドに圧縮して、ボール保持者への絶え間ないプレッシングと、ファーストディフェンダーの決定を素早く行い、頭数が足りないときは二度追いも辞さない献身性がこれからは必要となってくるのではないだろうか。

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