VARによって繰り返されてきたむなしい光景
ターニングポイントになったのは40分の細谷真大のゴールがVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)でオフサイドと判定されたことだろう。認められていればこの時点で1-1に追いつけていた。
試合開始から15分ほどはスペインがボールを支配して攻め込む流れだったが、それが途切れると日本が攻勢に転じて攻め込む流れに変わっていた。
40分、藤田譲瑠チマからペナルティースポットあたりでDFを背負う細谷の足下にシャープなパスが入る。細谷は懐にボールを収め、背中でDFを制して、ボールを隠しながら反転してシュート。ストライカーらしい見事な得点と思われた。しかし、パスを受ける際に細谷の足が背後のDFよりわずかに前に出ていたためにオフサイド。得点は認められなかった。
機械判定でなければわからないオフサイドだ。トップレベルの試合で定着したVARにはいまだに賛否両論があるが、その負の方の部分が現れた典型的なケースである。
誰も気づいていない数センチのオフサイドのせいで素晴らしいゴールが無効になる。サッカーの醍醐味が帳消しにされる。シューズが数センチ出ていたところで、それが何ら攻撃に利益をもたらしたわけではなく、守備側にとって不公平でないにも関わらず。
しかし、オフサイドか否かはそうした主観とは無関係であり、たとえ1ミリでもオフサイドならオフサイドでしかない。ファクトがすべてなのだ。そして、その事実を認定する能力は人間より明らかに機械の方が優れており、人はただ機械が示した事実を受け入れるほかない。これまで何度か繰り返されてきた何ともむなしい光景がまた1つ追加されていた。大げさに言えば、予想される人類の未来の中での暗い部分を見せつけられた気分になる、近年のサッカーでよくある場面の1つといえる。