「ただの試合です」大人びたアカデミー出身の16歳
話を戻そう。他にも後半から出場した18歳のルーカス・ベリヴァルは、誰の目から見ても輝いていた。ボールを持つと一人二人かわすのは当然とばかりに金髪をなびかせながらボールを運び、決定機を演出し続けた。今夏、スウェーデン1部リーグのユール・ゴーデンIFから加入した際に発生した1000万ユーロ(約16億円)の移籍金はバーゲン価格になる予感がある。
そして、何より筆者として印象的だったのは、16歳のマイキー・ムーアだ。この夏のプレシーズンマッチでムーアは、非公開のケンブリッジ・ユナイテッドFC(イングランド3部リーグ)戦を含めると、4試合で3試合で得点を決めており、3ゴール1アシストと得点に関与しまくっている。高いボールコントロール能力とアジリティを持つ神童は、大人に密集されてもボールを持つと果敢に仕掛けるスタイルだ。もちろん危ない場面ではボールを離す冷静な状況判断もできる。何よりトップチームでも動じず、自身の強みを生かし続けている。どんな性格の選手なのかと試合後にコメントを聞きに行くと、正直、かなり驚かされた。
ムーアは「いい経験だった。もちろん、東京に来ることもね。チームの力になれてうれしいよ。試合は信じられないようなものでした。ああ、来てくれたファンにも本当に感謝している」。まるで16歳とは思えない落ち着きで話し始めた。
筆者が、16歳なのにどうして試合で落ち着いてプレーできるのかを尋ねると「私にとっては、本当にただの試合です。自分のプレーをみんなに見せたい。だから、18歳(U-18)や21歳(U-21)と一緒にプレーしているようなものだと思っている。この調子には満足しているよ」と、アカデミー出身ならではの表現で試合中と同様に大人と変わらない対応を見せたのだ。
トッテナムでは、有望な若手たちが、今まさに才能を開花させようとしている。
試合の収穫という意味では、スタジアムの雰囲気が良かった点も最高だった。