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清水梨紗は「対策はバッチリ」と言っていた。なでしこジャパンはなぜブラジルを撃破できたのか?【パリ五輪現地コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

そのとき、ピッチで何が起きていたのか



 最終ラインで奮闘した高橋はなは「田中さんのおかげで前半も守備ですごく助けられたし、キープもしてくれた。田中さんのおかげで前半の戦いができたと思う」と話し、田中に「次があるから大丈夫」と声をかけていた。たとえゴールを決められなくとも、なでしこジャパンのエースは前線で自分がやれることを精一杯やっていた。

「前半もチャンスはありましたけど、(0-0で)折り返しできて、後半にビハインドになってからも自分たちのやれること、チームを信じて戦ってくれて逆転することができて本当にうれしい」

 池田監督が言うように、やるべきことは明確になっていた。ただ、少しでも気持ちが切れていたら、失点を重ねて勝負は決していただろう。選手たちは励まし合い、鼓舞し合い、勝つ望みを最後までつないだ。長野は当時のピッチでのやり取りを明かす。

「失点してもPKが外れても、黙る選手は誰もいなかった。やっぱり誰よりみんなが本当にこのチームで勝ちたい。このチームを信じる力っていうのはすごいと思ったし、本当にみんなで掴み取った勝利だった」

 そして、交代選手たちがチームにエネルギーを注入した。そのバトンを受け取ったのは、19歳の谷川萌々子だった。

 池田監督は長谷川唯をボランチからシャドーに上げ、谷川をボランチに入れた。「長谷川の良さとか、攻撃へのパワーはまだ残っていたと思うし、谷川は身体の強さも展開力もあり、ミドルシュートも武器」とその起用意図を明かす。「準備してきたからこそ出た結果」と言うように、これが結果的に奏功する形となった。

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