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【パリ五輪現地情報】「キツかった…」谷川萌々子が試合後に涙した理由。なでしこジャパン19歳が経験した苦しい日々

text by 編集部 photo by JMPA

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なでしこジャパンの谷川萌々子と熊谷紗希
【写真:JMPA代表撮影】


劇的なゴールでなでしこジャパンのヒロインになった谷川萌々子

 なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は現地時間28日、パリ五輪(パリオリンピック)グループリーグ第2節でブラジル女子代表と対戦し、2-1で逆転勝利を収めた。谷川萌々子は同点弾につながるPK奪取に絡み、逆転となるスーパーゴールを決めた。一躍ヒロインになったが、ここまでの紆余曲折を振り返って涙する場面もあった。

 80分、最後の交代機会として、池田太監督は谷川萌々子と千葉玲海菜をピッチに送り込んだ。初の五輪で、初戦で出場がなかった谷川だが、「自分が変えてやる」という強い気持ちでピッチに足を踏み入れた。そして、「いける気がする」という根拠のない自信も同時に芽生えたという。

 迷いなくゴールに向かうプレーが得点につながった。右サイドのペナルティーエリア内で鋭く切り返すと、対峙したヤスミムが転倒。インサイドへ運んだボールがヤスミムの腕に当たった。オンフィールドレビューを経てなでしこジャパンにPKが与えられ、これを熊谷紗希が決めて試合を振り出しに戻した。

 ドラマはこれで終わらなかった。途中出場の清家貴子のドリブルタッチが長くなって相手に渡ったが、相手のトラップが大きくなり、谷川の下にこぼれた。この瞬間、谷川は前に出ていた相手GKの頭上を超えるキックで、直接ゴールネットを揺らした。

 数分間の間に、試合をひっくり返す衝撃的な活躍を見せた谷川は、「太さんが自分にチャンスをくれたのは本当に感謝しかない」と言う。その理由を探ると、今月上旬に始まった国内合宿に行きつく。

 7月8日、メンバーに選出された18人と、バックアップメンバー4人が集まったが、全体練習の中に谷川の姿はなかった。多くの選手がオフ明けということもあり、フィジカル的な強度の高いトレーニングが組み込まれ、猛暑の中で21人はこれをこなしたが、その脇でジョギングする谷川の姿がそこにはあった。

 合宿3日目に行われた練習試合、その3日後のガーナ女子代表との一戦にも、谷川の姿はなかった。

「キャンプに入る前に怪我をしてしまって、歩くのすらキツかった。日本でのキャンプでは左足でボールを蹴ることすらできなかったんですけど、スタッフや選手の皆さんが本当に支えてくれたから今の自分がありますし、本当に感謝しかない」

 苦しかった当時を思い出した谷川の目には涙溢れた。これを見逃さなかったのが偉大なるキャプテンである。「勝ったんだよね!? 笑いなさいよ!」と、すかさずツッコミが入った。

 報道陣であふれる取材エリアは笑いに包まれた。ピッチでは10代とは思えない堂々たるプレーを初の五輪の舞台で見せた谷川だが、喋る姿は19歳のそれだった。

(取材・文:加藤健一【フランス】)

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