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サッカーU-23日本代表、“リベンジ”成功の理由。マリにとっての予想外、崩壊は起こらなかった【西部の目/パリ五輪】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

走り勝って奪った決勝ゴール



 ディアラがドリブル突破とパスワークからチャンスを作りはじめる。63分にはワンタッチでCB2人を一瞬で外してシュート。GK小久保玲央ブライアンがセーブしたが決定機だった。すでに57分に斉藤は交代で下がっていた。

 マリは最大の脅威を取り除くことにも成功したと思ったかもしれないが、日本がそうはさせなかった。斉藤に代わった藤尾は攻守に精力的に動き、左サイドにエネルギーを注入。左の崩壊を食い止める。荒木と交代した三戸はマーク相手を広範囲に引っ張りまわして守備のひずみを作りはじめた。

 71分、FKからのドゥンビアのヘディングがポストに当たって外れるピンチ。逆にチャンスは76分、ポケットに潜り込んだ細谷真大からのロークロスを三戸が合わせにいったが、うまく当たらず。ただ、これは決勝ゴールの伏線となる場面だった。

 81分、中盤右寄りでボールを受けた細谷は、相手を背負った半身の状態のまま右サイドへ流れていく。さらに敵陣に入ったところで背後の相手を振り切り、一気に縦へ。リーチのある相手DFに対して体でボールを隠し、前半から安定したポストプレーをみせていた細谷が、この時間帯で連続して突破につなげていた。

 細谷の長いドリブルからのクロスに、三戸がマークを外して受けに動くがわずかに届かず。しかしファーに走り込んだ佐藤がシュート。GKが防いだが、こぼれ球を山本が詰めてゴール。この間、ボックス内でほぼ1人で守備対応していたイブラヒマ・シセは5分前のプレーで足を痛めていた。細谷のドリブルに呼応してボックスに入って来た三戸、佐藤は交代出場で疲労していない。シュートを決めた山本も含め、走り勝って奪ったゴールといえる。

 ロスタイムにCKから波状攻撃のマリは、川﨑颯太のシュートブロックが手に当たったことでPKを得る。決めていればぎりぎりで引き分けられたが、ドゥンビアは左へシュートを外す。GK小久保もコースを読んでいた。

 細谷の驚異的なチャンスメーク、相変わらずの小久保の神通力もあって際どく勝利。グループステージ通過を2試合で決めた。総力戦の強さ、接戦に持ち込める守備力、要所で発揮される個の攻撃力。このチームらしい勝利だった。

(文:西部謙司)

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【了】

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