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サッカーU-23日本代表、“リベンジ”成功の理由。マリにとっての予想外、崩壊は起こらなかった【西部の目/パリ五輪】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

マリは不気味だった



 マリの選手たちは保持したときに、あまりボールを晒さない。通常より少し、日本選手からボールが遠い懐の深い持ち方をする。そのために迂闊に足は出せず、このキープ力によって押し込まれていく流れに。CKでは高さの優位性も出してきた。

 一方、マリは高い位置からのプレスはしてこない。ミドルゾーンから捕まえていく形。とくに藤田譲瑠チマへの警戒は強く、オーバーエイジの10番サラム・ジドゥをマンツーマンでつけていた。押し込めてもいったんは引く。藤田を経由させない。ボールを持たせて、引っかけてカウンターを狙う。3月に快勝した相手に対して油断なく対応していて、その慎重さが不気味でもあった。

 28分に藤田がジドゥへのタックルでイエローカード。斉藤光毅のドリブル、キープからのチャンスはあったが、どちらかと言えばマリのペースで試合が進んでいた。

 ところが、35分あたりからマリの藤田へのマークが急に曖昧になる。ずっとマークしていたジドゥが藤田を離し、ブバカル・トラオレがつくように。しかし、それもはっきりしないまま、日本は藤田からのパスで立て続けにチャンスを作ることができた。

 マリのMFは担当ゾーンに入って来た相手をマークし、そのまま受け渡さずに守る。それだけにマークが曖昧になると傷口になりやすく、綿密なようでいてところどころ穴も見え始めていた。

 中盤でゲームを作るはずのジドゥが藤田のマークでエネルギーを使いすぎて攻撃にあまり絡めず、それで一時的にマーク相手を変えたのかもしれない。日本にとっては少し相手のガードが下がった感があった。

 ただ、後半もやや優勢だったのはマリ。前半は左ウイングだったティエモコ・ディアラを右へスイッチ。日本にとって最も脅威だったディアラが右へ来たことで、マリにとって脅威だった斉藤が守備に下がるようになった。ここは綱引きになるが、保持で優勢だったマリが一石二鳥を狙ったものと思われる。

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