[4-4-2]は成功の布石? 湘南ベルマーレが手にしたのは…
まず土台が明確に3-1になる。これによるCBの持ち出しが多くなる。CBの持ち出しに付随してIHの外流れが少なくなり、WBが幅を作ることとCFのサイド奥を取る回数が多くなる。さらにCBの攻撃参加により同サイドに人数を掛けながら、ネガティブトランジションの担保を行う。CFの背後の抜け出しとトランジションによって奪い返したボールを逆サイドへ解放することで相手を押し込んでいく。
これによってCBも高い位置を常時取れるようになるので、ネガティブトランジションの強化にも成功。当然、湘南を支えているダイレクトアタックも忘れていない。土台に対してプレスをかけてくるチームには積極的に背後を狙い、ゲーゲンプレスを敢行していく。本来の良さを「速さの選択」によって正しい使い方で押し出すことができるようになった。
良い保持は良いトランジションを作り出し、体力の消耗を抑え、そして最後まで強度の維持を可能にする。だからこそ24節ではガンバ大阪に勝利することができたのではないだろうか。
さらにプレッシングの微調整も加えられた印象だ。IHがSBに向かっていく回数も当初より減って、WBを押し出す回数が増えている印象だ。3-2のプレス隊は中央のスペースを管理することを念頭に置き、CFがCBに向かったときに全体のプレスのスイッチが入っていく。IHのタスクが中央の選手とスペースの管理に変わったことによって、IHの移動コストも減ったのは間違いない。
湘南が開幕当初から度々行った[4-4-2]のトライ。これがWBによる4バックと3バックの行き来を行うための布石だったとしたら……。IHのプレスタスクを微調整しつつ、[4-4-2]のようにも守れるようにするための布石だったとしたら……。ここまで考えるのは妄想を膨らませ過ぎかもしれないが、こう考えることができるのもサッカーの楽しさの1つだと思う。
湘南は残留に向けて、さらなる浮上に向けて大きなものを手にしたことは間違いないだろう。本来の良さにさらなるものを積み上げた湘南が逆襲するときが来たのかもしれない。
(文:Nobuya Akazawa | J1全部見るマン)
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