「『ザ・マリノス』という感じ」
とはいえ、首位・町田という相手は難敵だ。6月15日にホーム・日産スタジアムで対峙した時も1−3で敗北を喫している。相手のハイプレスに引っかけられ、カウンターを食らう形を極力減らし、リスタートでもスキを作らないようにすることが重要だった。
いわゆる“解任ブースト”でチーム全体の士気や結束力が向上していたこともあり、この日のマリノスは非常に良い入りを見せた。特に目立ったのが左サイド。エウベルと加藤蓮の関係性が絶妙で、グイグイと深い位置まで押し込んでいく。そこに中盤3枚も流動的に絡んだり、逆サイドも生かしたりと、自由自在な攻めが見られた。
迎えた30分、左からエウベルが持ち込んで放ったシュートが相手キャプテン・昌子源の腕に当たり、マリノスはPKを得る。これをアンデルソン・ロペスが確実に決め、幸先よく1点をリードした。
さらに2点目が生まれたのはこの10分後。右サイドでのスローインからヤン・マテウス、喜田、エウベルと左へ大きく展開。攻め上がった加藤につながり、左サイドから供給された鋭いクロスにファーから飛び込んだのが天野。ハッチンソン監督も「マリノスらしい形」と絶賛したゴールは効果抜群だった。
「エウベルに渡って、蓮がハーフスペースに侵入した時に、『ファストタイム・クロス(素早いクロス)』と言われていたし、来るなと思ったので、飛び出したら本当に来た感じですね。ああいうつかみきれない攻撃というのがマリノスのよさ。『ザ・マリノス』という感じなので、相手も研究しても止められないと思ってます」
天野が自信をのぞかせたが、ボールを回していた段階で、ペナルティエリア付近に4人の選手がいて、小刻みに動きながらスキを狙っていたのは特筆すべき点。そして天野がフリーになるのも計算通りだった。人とボールが動き、繰り返しスペースを狙い続ける彼らのスタイルが戻ってきたのは、間違いなく朗報と言っていいだろう。
気温30度超の猛暑の中、33歳の天野は懸命に走り、攻守両面でハードワークを続け、得点という結果を残した。ゴールへのこだわり、球際のバトルという部分は、2年間過ごした韓国での経験値が大きなプラスになっているいという。