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Jリーグ 2か月前

「やはり…そうですね…」川崎フロンターレの現状は、登里亨平の目にどう映ったのか。“敵”としての新たな景色と感情【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「特に…何て言うんですかね…」


「自分が感じたことが記事になるのは…対戦相手もいるので、なかなか言えない部分もありますけど、やはり後半は特に…何て言うんですかね…そうですね。何もないです。すみません。本当にすみません」

 冗舌だった登里が急に奥歯にものがはさまったような口調になりながら、必死に言葉を紡いだ。

「やはり90分を通して距離感をコンパクトに保つ部分も必要ですけど、簡単に勝てればそれほど困る必要もないですし、簡単にできるのであれオニさん(鬼木達監督)がもうしっかりと修正しているはずなので。それだけサッカーは難しいと思うし、これは自分たちにもいえますけど、相手が対策してきたときにそれを上回れる頭と技術、そして強度の部分はいまの時代に本当に必要なので。もちろんスピードも求められるなかで、それでもフロンターレらしいサッカーはできていたんじゃないかなと思っています」

 登里が目の当たりにした川崎らしさ。そのひとつにMF大島僚太のスーパープレーがある。

 両チームともに無得点で迎えた26分。セレッソのプレスをかわしながら、左サイドバックの橘田健人がハーフウェイライン上で、センターサークル内にいた大島へ横パスを預けた直後だった。大島は半身の体勢から、左足によるワンタッチのロングパスを、ほぼノールックの状態で左タッチライン際へ送った。

 ターゲットとなった快足の左ウイング、マルシーニョがオフサイドぎりぎりで抜け出し、セレッソの右サイドバック、奥田勇斗の裏を突いた。幸いにも決定機に至らなかったものの、アクシデントもあって前半限りで退いた大島のパスセンス、そして視野の広さが凝縮された場面に登里も舌を巻いた。

「守備をしながらでも、味方の攻撃的な選手の位置を把握している、というところでは、相手が嫌がることを本当にやってきますよね。コンディション的にはまだまだみたいですけど、たとえコンディションが悪くてもあのプレーができる。こうして(大島)僚太とスタジアムで会えて、実際にプレーしている姿を見ることができましたけど、次はしっかりとお互いピッチの上で会えればと思っています」

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