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Jリーグ 2か月前

「やはり…そうですね…」川崎フロンターレの現状は、登里亨平の目にどう映ったのか。“敵”としての新たな景色と感情【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「ピッチに立ちたかった」思い出が詰まったアウェイの地


「間延びしていたじゃないですか。そのへんでウチの質的優位というものをうまく保てていたと思いますし、そのなかでボールの回し方も変えるとか、いろいろと見ながらできていたと思います。ただ、湿度の高さもあって難しいし、どうしてもオープンな展開になるなかでうまくゲームをコントロールするというか、ちょっと急ぎすぎたところと、相手を押し込んだところをうまく使い分けていたと思っています」

 前述したようにガンバ戦で左ハムストリングを損傷したものの、全治などの詳細は発表されていなかった。長期離脱を伴う大怪我だとわかっていたなかで、心のなかで復帰戦として狙いを定めた一戦があった。

 思い出が詰まった川崎のホームへ乗り込む第23節を、あえて公言しなかったのにはわけがあった。

「そこは情報的な駆け引きというか、言っても間に合わないよりは。でも、しっかりとここを目指して最善の努力を積んできたつもりですし、そのなかで練習に復帰して、アピールしてきたところをドクターやメディカルスタッフ、あとは監督をはじめとするコーチングスタッフが判断してくれたと思います。僕たちもしっかりと勝ちに来ましたし、ベンチには入れましたけど、ピッチに立ちたかった、というのはありますね」

 キックオフを直前に控えた両チームのメンバー発表。セレッソの先発メンバーに続いて、リザーブ陣の2人目で「ノボリザト キョウヘイ」が読みあげられた。割れんばかりの拍手が敵地のピッチに降り注ぐ。場内アナウンスも次の選手までの間でちょっと時間を空けて、拍手と歓声をさらに促す気づかいを見せた。

 敵チームの一員として乗り込んできた自分を、こんなにも温かく歓迎してくれるのか。他チームへ移籍した選手にブーイングが浴びせられるケースが少なくないなかで、川崎に関わるすべての人々が拍手や声援を介して伝えてくれた優しさに心を震わせた登里は、同時にセレッソに移籍した目的を思い返してもいた。

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