髙橋直也は「その準備が非常にいい」
磐田戦で髙橋は実に117本のパスを成功させ、95.9%のパス成功率を記録した。もちろん、相手が1人少なかったことがこの数字の1つの要因ではあるが、攻撃の起点となるパスも多かった。
「(鈴木)雄斗くんが外で張ってくれているので、そこに(パスを)つけるのもそうですけど、つけたあとに自分がそのまま後ろで受けるんじゃ前進できない」と言うように、パスを出した後の動きで鈴木雄斗を助けていた。また、「内側に入ることで相手のボランチが出てくれたら、(味方の)インサイドハーフやアンカーが空いたりもするので、意図的に中で受けて捌くというのは意識していた」とも話している。
絞った位置からパスを出すことで、相手のプレスを引き出すことはできるが、鈴木雄斗との距離は遠くなるので、必然的にパススピードと精度が求められる。ただ、そこは髙橋の武器でもある。山口監督は髙橋の良さを次のように表現している。
「相手をいなしながら、逆を取りながら攻撃に参加するというのはトライしてくれている。それは今のチームにとって、攻撃の時間を1つ、2つ増やすことにつながっている」
髙橋の良さが出たのが38分の2点目のシーンだ。低い位置で構える磐田が出てこないと見るや、髙橋はペナルティーエリア手前まで持ち運び、右サイドに開く鈴木雄斗にパスを出す。鈴木雄斗のクロスはクリアされたが、これを田中聡と髙橋が競り、マテウス・ペイショットを自由に飛ばせなかった。これをジャーメイン良が拾ってカウンターを繰り出そうとしたが、田中が寄せる。さらに、こぼれ球を拾った髙橋の前方にはぽっかりとスペースが空いていた。
「体勢を崩していたんですけど、自分から見て右側にいた選手の位置も見えていましたし、相手の守備の動きと(池田)昌生くんの立ち位置を見ていいパスを送れた」
絶妙なタイミングで髙橋が出したパスを受けた池田は、GKの出方を冷静に見極めてゴールネットを揺らした。「相手の動きを見逃さないように日々心掛けている」という髙橋のスキルが生んだゴールだった。