エンバペの驚きのデータとは?
【写真:Getty Images】
UEFAのデータを見ると、フランスの1試合平均シュート数16.3は、ドイツ(18.8)、スペイン(17.6)に次いで多い。ところがそれぞれ11点、15点をネットに収めたこの2国に比べ、フランスは4、しかもうち2点が敵のオウンゴールなのである。
今大会のフランス代表の攻撃陣の顔ぶれを見ると、現役最高のストライカーの1人であるエンバペを筆頭に、インテルで公式戦15得点14アシストと、年間を通じて安定していたマルクス・テュラム、エンバペとPSGでもチームメイトだった、リーグ・アンの年間アシスト王(8)ウスマン・デンベレ、同じくPSG所属のコロ・ムアニ。この大会で代表から引退することを宣言していた37歳の古株オリヴィエ・ジルー。キングスレー・コマンもメンバー入りしていたが、怪我続きでシーズンの約半分を欠場していた彼は、途中、妻の出産のために離脱もしていて、今大会ではほぼ戦力外だった。
そんな、もうひとつインパクトに欠ける感じもあるこの攻撃陣の中で、責任の矛先を向けられたのは当然ながら主砲のエンバペである。
データを見て驚いたが、この大会、全プレーヤー合わせてもっとも多くシュートを打っていたのは、エンバペだった。その数「24」。しかしそのうち決めたのは、ポーランド戦でのPK1本のみだ。
「レアル・マドリードへの移籍の件など、サッカー以外のことでメンタルが疲弊していた」
「PSGで(ルイス・)エンリケ監督からスタメンから外されて試合勘が鈍っていた」
などなど、エンバペの不調の要因を探る議論も展開された。
たしかにPSGでのパフォーマンスは飛び抜けて素晴らしかったわけではないが、それでもリーグで27得点、公式戦では44得点という化け物級の数字を挙げている。
確実に無視できないのは、初戦のオーストリア戦で相手DFと接触して鼻を骨折したことだ。
次のオランダ戦を欠場したあと、ポーランド戦からはフェイスガードをつけてプレーを続行することになったが、なかなかフィットするものを見つけられず、「視界が3Dのように見える」とこぼしていた。数週間は装着が必要と言われていたのに、準決勝のスペイン戦では、彼自身の意思でフェイスガードを外してプレーした。多少のリスクは負ってもこの試合に賭けたかった闘魂の表れだろう。
加えて、ディディエ・デシャン監督の采配だ。