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Jリーグ 3か月前

「明るくやろうかな」セレッソ大阪、西尾隆矢をどん底から救ったものとは?「本当に情けない」アジア杯からパリ五輪へ【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

父親からの教えがもたらす西尾の「いま」


「今回の退場の件で、自分自身はあまり引きずらないタイプであり、さらに応援してくれる周囲の言葉の数々がいつも僕を救ってくれているとあらためて感じました。さらに僕自身は小さなころから父親や指導者の方々に、ミスをした後のリバウンドメンタリティーは日々の積み重ねに導かれるとずっと言われてきたので」

 西尾にとっては、脇坂が冗談混じりにかけた「退場しないようにね」も応援してくれる言葉となる。直接対峙した一戦を含めて、カタールから帰国後のパフォーマンスが出色だと認めているからこそ、川崎のキャプテンはあえて「退場」というパワーワードを、フランスへ出発する直前の西尾へ贈った。

 振り返ってみれば昨シーズンも、鳥海やマテイ・ヨニッチ、進藤亮佑らと激しいポジション争いを演じた末にリーグ戦の出場がわずか9試合、322分間に終わっている。FC東京と2−2で引き分けた今シーズンの開幕戦もリザーブのまま終えた。それでも、下を向かない西尾の姿勢が「いま」を引き寄せている。

「サッカーでコツコツやるしかない、と自分自身では思っているので。やってしまったことを引きずるのではなくて、次のチャンスでどのようにして、少しでもポジティブに生かしていくのかを常に考えるようにしている。その意味でも、試合だけに出場していればいいとも思わない。練習の過程が自分としてはすごく大事だし、練習でコツコツ積み重ねてきたものが、少しずつ試合にも出てきていると思う。練習でどんどんトライを重ねて、成長していく過程を感じられる瞬間が、自分にとってすごくうれしいものなので」

 川崎戦では一人で四役を担った。4バックの右センターバックとして先発し、システムが『3−4−2−1』に変わった59分からは3バックの右へスイッチ。再び4バックに戻った68分からは右サイドバックへ移り、FWレオ・セアラがベンチへ下がった89分からはゲームキャプテンも務めた。

 3バックの右、そして右サイドバックでは積極果敢に前線へも攻め上がった。なかなか見られない右サイドバックでのプレーに関しても、西尾はセレッソ大阪U-15に所属していた中学2年生のときに「1年間ずっとやっていたので、何もできないわけではないです」と心配無用を強調している。

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