防ぐのが容易ではない米田隼也のフィード
確かに、米田が正確なフィードを左WGの前のスペースに送るシーンは、多くの試合で見られる。陣地を回復するだけでなく、ともに1対1で強みを発揮する笠柳や松澤の得意な形を一発で作り上げる。対戦相手は米田のフィードを防ごうと寄せるも、防ぐのは容易ではない。なぜならば、「普通だったら左で蹴らせないのがセオリーですけど、自分は右利きの左SB」。米田は両足から正確なフィードを蹴られるため「相手にとって抑え所がない」のである。
熊本は大木武監督らしい流動的なサッカーが特徴で、第22節からは昨シーズンまで用いてきた[3-3-1-3]を採用。長崎との試合でも、サイドの局面で3対2の数的優位を作り崩そうとしてきた。しかし「サイドの数的優位でやられることはあるけれど、最後のところでやらせないという共通意識を持っていた」と、チーム内での優先順位が明確であったため、迷いはみられず。米田も前半から慌てずに対応した。セットプレーやミドルシュートで危険な場面はあったものの常に中央は強固で、流れの中から完全に崩される場面はなかった。
53分には、米田の守備時の集中力が発揮された。直前にCKから、最後はマテウス・ジェズスが体で押し込んだように見えた場面があり、長崎の多くの選手は視線を副審に向けていた。その隙を見逃さず、熊本GK田代琉我は素早くパントキックで右サイドへボールを供給。この瞬間の切り替えは熊本が上回っておりピンチになり得たが、米田は懸命に戻ってきた松澤とともに落ち着いて体を入れ、長崎ボールのスローインにしてみせた。何気ないプレーのようで、試合の流れを渡さない重要なワンプレーだった。