ガレス・サウスゲート監督の決断
ワトキンスとパーマーの投入によって何が変わったのか。本題の前に、まずは先発出場したエースFWハリー・ケインのプレーについて話しておきたい。
今大会のケインは、ベストな状態であるとは言い難いパフォーマンスに終始している。これは多くのサッカーファンの間で議論の的になっており、元イングランド代表FWイアン・ライト氏もその一人。同氏はケインについて、『Stick To Football』のポッドキャストで「彼は(動きが)シャープではないし、ペナルティエリアにいないんだ」と語ったことを英メディア『Four Four Two』が報じている。
アーセナルで活躍した代表OBの指摘通り、ケインはペナルティエリアにいて欲しいタイミングにペナルティエリア外にいることが多すぎる。クロスのターゲットとして間違いなく有効な存在であるにも関わらず、彼がボックス内で相手DFの注意を引いている時間はほんのわずか。頻繁にミドルサードまで降りてきて本来のポジションを空けてしまうため、攻撃の流動性を阻害している感が否めない。
加えて、昨季のブンデスリーガ得点王は足元でボールを受けようとするため、味方選手がドリブルで侵入するためのスペースを意図せず減らしている。オランダ代表の守備陣は整然とした最終ラインを容易に保つことができ、これがイングランド代表の攻撃を停滞させた。
このような状況を受けて、指揮官は試合時間残り10分となったタイミングで大エースを交代させる決断をする。ここで選ばれたのがオリー・ワトキンスだ。なぜここで代表で一定の活躍を残しているイヴァン・トニーではなく、ワトキンスを投入したのか。サウスゲート監督がケインに代えてワトキンスを投入した明確な狙いと、ここでアストン・ヴィラのストライカーが優先された理由を考えていこう。