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Jリーグ 3か月前

「夢がかなったよ」石井久継は亡き友の思いも背負って。祖母のいる天国へ届け、湘南ベルマーレでJリーグ初ゴール【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

亡き友へ「一緒にプロサッカー選手になろうって…」


「僕が小学校1年生のときに、同じ小学校に通っていて、同じサッカーチームに入っていた親友が交通事故で亡くなりました。その子はサッカーがすごくうまくて、一緒にプロサッカー選手になろうって…」

 親友との約束を思い出したのか。感極まった石井は号泣しながら、必死に言葉を紡いでいる。

「…今年から僕はこうしてプロになれたので、正月に帰省したときにお墓参りにいって『夢がかなったよ』と伝えてきました。これからも2人で頑張っていきたい、と思っています」

 その新体制発表会見で、背番号を昨シーズンまでの「37」から「77」に変えている。あえて「7」が並ぶ背番号に、チームメイトのMF鈴木淳之介から「パチンコ好きだと思われない? 大丈夫?」と心配された石井は自らの誕生日、2005年7月7日から選んだ背番号だと明かしている。

「福山ローザスセレソンでは最初にもらって、卒団するまで『77』をつけていました。昨シーズンも『77』にしようと思ったんですけど、リーグへの申請に間に合わなかったんですね。それでも『7』が大好きなので『37』にしたんですけど、今シーズンは生まれ変わるためにも『77』にしよう、と」

 チーム内で2番目に大きな番号となる、念願の「77」を背負った石井はこんな誓いを立てている。

「湘南の『彦星』になってみせます!」

 七夕生まれにちなんで、ファン・サポーターに名前を覚えてもらう意味もこめて、自らを「彦星」になぞらえてから約半年。七夕、つまり自身の誕生日前日に、新体制発表会見の席で「じゃあ、僕は『織姫』になります」と宣言した福田のアシストで初ゴールを決めた。

 まるで用意されていたような同点劇に奮い立った湘南は、アディショナルタイムの92分にFWルキアンが逆転ゴールをゲット。劇的な展開の末に、7試合ぶりとなる白星を完全アウェイの敵地でもぎ取った。

「自分が入ったときのスコアは1対1で、残り20分ほどという状況でしたけど、自分的にはちょっと早い交代だな、これは攻撃的にいきたいんだ、という(ベンチの)メッセージとして受け止めて、絶対チームを勝たせないといけない、という気持ちで試合に入りました。18歳最後の試合で気合いも入っていましたけど、個人的にはもっと早く決めなければいけなかった、という思いもあります」

 今シーズンでいえば、1試合の先発を含めた11度目のチャンスで決めた初ゴールに、反省の意味を込める言葉も忘れない。それでも、68分にインサイドハーフとして投入され、それまでの[3−1−4−2]を[4−4−2]に変えた85分以降で、左サイドハーフに変わった石井があげたゴールは新たな価値ももたらした。

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