J1リーグ初ゴールは「練習で繰り返した形」
「ワンタッチで抜け出した後にあそこへもっていくのは、何回も何回も練習してきた形でしたし、自分の特徴が出たゴールでした。練習で繰り返した形を試合でそのまま出せた。自分としてはそれがすごくうれしい」
浦和の守護神・西川周作のロングフィードを、左タッチライン際で左サイドバックの畑大雅が頭で弾き返し、こぼれ球を自ら拾って前へと運ぶ。そして、前方にいたトップ下の福田翔生へパス。左サイドハーフの石井はこのとき、福田がボールを落としてくれると信じて、畑の内側のレーンで一気にスピードをあげた。
福田は浦和のセンターバック佐藤瑶大を背負った体勢で、以心伝心でボールを右側へワンタッチではたく。走り込んできた石井はファーストタッチでボールを大きく前へ運び、自らはさらに加速しながら、マークを福田から切り替えてきた佐藤と慌てて詰めてきたボランチ安居海渡の間を瞬く間に突破した。
前方にいる浦和の最後のフィールドプレイヤー、センターバックのマリウス・ホイブラーテンは、FW根本凌に巧みにブロックされていて思うように動けない。石井は右足のアウトサイドを駆使してボールを右へ持ちだし、そのままペナルティーエリア内へ侵入した直後に、スピードを緩めずに右足を振り抜いた。
威力十分で、なおかつインサイドキックから放たれ、コントロールも重視された一撃が、西川が必死に伸ばした左手を弾いてゴール右隅に決まる。今シーズンで11試合目、2種登録選手だった昨シーズンも含めれば出場15試合目で決めた待望のJ1リーグ初ゴールは、2−2に追いつく起死回生の同点弾となった。
「僕が小学生のとき、西川選手の左足から放たれるパントキックが憧れでした。僕自身はキーパーではないんですけど、西川選手の真似をして何度も練習したのを思い出しました。みんなで西川選手と同じメーカーのキーパーグローブを買って、あの綺麗なキックを蹴ろうとして。その選手からゴールできてすごくうれしかった」
初々しい言葉を弾ませる石井へ、チームメイトたちも目を細める。たとえば畑は「お前、何もやってねえよ。調子に乗んなよ」と、石井をして「愛ある指摘をいただきました」と苦笑させた祝福の言葉をかけている。石井と干支が同じで、年齢がひと回り上のMF鈴木雄斗は日々の練習で見てきた石井の姿を思い出した。