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なぜ3バックなのか?「シャビ・アロンソはレアル・ソシエダBで…」相手なき理想に戦術は存在しない【スペイン人指導者の分析】

シリーズ:スペイン人指導者の視点 text by 川原宏樹 photo by Getty Images

シャビ・アロンソ=3バックではない


 前回「モダンな3バック」について言及したとき、レバークーゼンを例に挙げた。そのレバークーゼンを指揮するシャビ・アロンソ監督だが、「レアル・ソシエダBの監督をやっていたときは、4バックでやっていました」と説明するアレックスがその理由を明かした。

「それは自分の持ち駒ともいえる選手がそれぞれどういった特徴があるのかを見て、シーズンを戦い抜くために適切な戦術を見出しているからです。決して理想とする戦術ありきで選手を当てはめているのではなく、自分たちの武器は何で相手に対して自分たちはどう戦うべきという考えを優先して導いています」

 勝利することが目的であって、戦術はそのための手段である。戦術が目的となってしまい、選手らの特徴すら見誤ってしまうパターンは、世界でも見られることである。アレックスはEURO2024(ユーロ2024)を戦うイングランド代表を例に挙げ、日本代表にも同じことが起こるかもしれないと警鐘を鳴らす。

「イングランド代表に招集されている選手らは、今大会のなかでも質が高くトップクラスといえるでしょう。しかし、その試合内容は決して褒められるようなものではなく、退屈なゲームを展開しました。優勝できるだけのメンバーがそろっているにもかかわらず、なぜそのようなことが起きたのかというと、ゲームプランに則して選手を起用できていないからでしょう。監督が求めるものとピッチ上の選手が考えていることが、うまくかみ合っていないようでした。それでも質の高い選手がいるから勝てる。勝ったからといって、監督が素材である選手らの特徴をうまく生かして料理できているかは別の話ですよね」

「これは今の日本代表にもいえることで、森保監督もそうなってしまう可能性を十分に感じています」

 日本代表は実力差のある相手との試合が続き、実行すべきゲームプランや為すべき戦術がなくとも勝ててしまったともいえる。やはり森保監督の真価が改めて問われるのは、最終予選になりそうだ。

 9月から始まる最終予選に向けたアレックスの見解は、次回のお楽しみとなる。

(取材・文:川原宏樹)

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【了】

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