相手なき理想の限界。「日本でよく見かけるのは…」
「日本代表の選手たちのほとんどが、海外でプレーしています。彼らはヨーロッパの監督と仕事をしていて、その監督たちが試合に対してどのように準備をして、どのようにトレーニングをするのかを知っています。なかには、チャンピオンズリーグに出場するようなチームに所属する選手もいます」
「つまり、それはヨーロッパでもトップクラスの監督と仕事をした経験があるということです。そのような経験をもつ選手たちに対して、ゲームプランがどうなっていて、どうプレーすべきかといった説明がしっかりとできているのかが、日本代表を強化するための肝になるはずです」
日本代表にかぎった話ではなく、日本人指導者が陥りがちな特有の風潮があるという。その風潮が手枷足枷となり、明確なゲームプランを立案できない指導者が多いと所見を語った。
「日本でよく見かけるのは、指導者が自分たちはどうあるべきかということだけにフォーカスして、相手がどうプレーするのかということを置き去りにして試合に臨んでいる状態です。自分たちがどうプレーしたいかというプランニングはもちろん大切ではありますが、そこから一歩踏み込んで相手がどうしてくるかを考え、それを受けて自分たちはどうしなければならないのかをプランニングする必要があります」
「最近の日本代表にも同様のことが起きているのではないでしょうか。試合後の選手らのコメントから察するに、そういった部分でもの物足りなさを感じているのではないかと思っています」
先述したように、サッカーには必ず相手が存在する。自分の道を極めようとする武道のような心持ちも重要だろうが、相手を見ていなければ勝てるものも勝てなくなる。相手のやり方や特徴を認識したうえで、自分たちのよさを発揮するための方法を考えるのが戦術なのだ。相手なき理想には、戦術といえるものは存在しない。