イングランド代表がみせた明るい兆し
【写真:Getty Images】
スイス代表との試合でイングランド代表を最も評価したいのは、相手のことを分析して対策を立てていたことだ。これはこの試合を除く4試合では見られなかった。
その対策とはスイス代表の[3-4-2-1]のシステムに合わせて、自分たちも[3-4-2-1]にしたこと。これまでのイングランド代表は[4-2-3-1]でスタートすることにこだわっていたが、ようやく戦術的な柔軟性をみせたと言える。
イングランド代表の[3-4-2-1]で良かったのは、右ウイングバックにブカヨ・サカを置いたこと。本来ウイングバックのポジションには順足の選手を起用しがちで、この試合のスタメンだけ見るとサカを左、キーラン・トリッピアーを右で起用してもおかしくなかった。
サカを[3-4-2-1]のミラーゲームで右に置いたメリットは、対峙した左ウイングバックのミシェル・アエビシェールとの1対1での優位性を活かせることである。本来アエビシェールは中盤の選手で、実際に保持時は左の大外から中盤の位置でボールを受けて攻撃面で違いを作っている。
しかし、守備時は左ウイングバックのポジションで相手のアタッカーと対峙しなければならず、サカ相手に分が悪いのは明らかだった。アーセナルのエースは容赦なくアエビシェールを襲い、1対1の局面で圧倒。何度も右サイドを切り裂き、スタッツを見てもサカが地上戦で13戦9勝(勝率69%)と高い勝率を誇ったのに対して、スイス代表MFは8戦1勝(12%)と対人戦で苦しんだ。