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ブライトンで三笘薫を指導 イタリア人戦術家デ・ゼルビが母国を離れて向かった先は【流浪の英雄たち 第5回】

text by アンディ・ブラッセル photo by Getty Images

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「東欧最強クラブ」と呼ばれるウクライナのシャフタール・ドネツク。チーム関係者の膨大な証言を通して、知られざる流浪の英雄たちの戦いに光を当て、クラブの熱源に迫った『流浪の英雄たち シャフタール・ドネツクはサッカーをやめない』より「東欧のバルセロナ」を一部抜粋して公開する。(文:アンディ・ブラッセル、訳:高野鉄平 )


両者にとって新たな幕開けだった


【写真:Getty Images】

 ロベルト・デ・ゼルビにクラブのコンセプトを売り込むことができたのも、ピッチ上のイメージによるものだった。

 今では伝統となっているシャフタールのアプローチと、彼がプレーに対して持っていた明確な考えが、前向きな姿勢という点でシンクロし、2021年にルイス・カストロの後任として監督の仕事を引き受ける上での後押しとなった。

 それは両者にとって新たな幕開けだった。デ・ゼルビにとっては、イタリア国外で初めての仕事である。フランスなどの国から関心を惹きつけてもいたが、そういった欧州の注目度の高いリーグを選んだわけでもなかった。

 彼は現役時代も、キャリア終盤にかけてルーマニアのクルージュで2年ほど過ごしたのを除けば、ほぼ母国で過ごし続けていた。

 一方のシャフタールは、チーム内で大きな部分を占めるようになったブラジル人たちとのコミュニケーションや文化的適合を図るため、ルチェスク以降にはポルトガル語圏監督の路線を続けていたが、その流れを断ち切ることになる。

 勇気のいる決断だった。少なくとも短期的には、戦術面を重視する勝負に出た。両者ともに強く成功を信じきっていた。

 シャフタールをピッチ上で導く行動原理は、デ・ゼルビにとって馴染みのあるものだった。

 彼の指揮するチームはいつも大胆で攻撃的で、ボールを持つことを好む。それは明らかに、新たに率い始めたこのチームも備える前提条件であった。

 デ・ゼルビはサッスオーロではドメニコ・ベラルディ、マヌエル・ロカテッリ、ジャコモ・ラスパドーリといった選手たちの育成に携わり、彼らは皆イタリア代表の記念すべきEURO2020制覇に貢献することになった。

 デ・ゼルビにも多くのクラブが関心を惹きつけられた。選手の価値を高められる彼の能力は、近年のシャフタールと明らかに共鳴する部分であった。
 
 グアルディオラとのつながりもあった。彼は現役生活の終わりにかけて、デ・ゼルビの故郷であるブレッシャで短期間プレーしていた。グアルディオラと同じくデ・ゼルビも、マルセロ・ビエルサの弟子にあたる。

 アルゼンチンを代表する戦術家であるビエルサは、詩人のような心と科学者のような目を持ち、「スタハノフ的」な献身性を要求する。

 プレッシング、マンツーマンマーキング、そして常に攻撃的であること。デ・ゼルビは2016年にパレルモから解雇されたあとビエルサにメッセージを送り、北仏リールを訪れて恩師の練習指導を見学しても構わないかと訊ねた。ビエルサは諸手を挙げて彼を歓迎した。

(文:アンディ・ブラッセル、訳:高野鉄平 )

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<書籍概要>


『流浪の英雄たち シャフタール・ドネツクはサッカーをやめない』
アンディ・ブラッセル 著、高野鉄平 訳
定価2,420円(本体2,200円+税)

8年間で2つのホームを失ったウクライナ最強クラブの熱源

「東欧最強クラブ」と呼ばれて久しいウクライナのサッカークラブ、シャフタール・ドネツクは、2014年以来、ホームスタジアムでプレーしていない。同年4月にドンバス地方で戦闘が開始されると避難を余儀なくされ、22年2月にはロシア軍のウクライナ本格侵攻により再度の避難を強いられた。さらに主力選手の流出など、自らの姿を見つけだす必要に迫られる普通ではない状況の中、それでもシャフタールは普通にプレーし続けている。シャフタール関係者の膨大な証言を通して、知られざる流浪の英雄たちの戦いに光を当てる。

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【了】

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