選手を想う気持ち。「日本サッカーの正しい成長」とは…
「選手の成長があるからこういう難しい状況になった反面、嬉しくも思うし、日本サッカーの正しい成長なんだろうなとも思っている。我々に求められているハードルも上がってきている。オリンピックのメンバー、OAやU-23の海外組も同じことが言えるが、そういう状況に来ている」
ロンドン五輪の徳永悠平(FC東京)、アテネ五輪の曽ヶ端準(鹿島アントラーズ)など、ピンポイントで国内組が呼ばれた例はあるが、リオ五輪ではぶっつけ本番で国内組3人を招集してうまくいかなかった。国内組の招集はハードルが下がるかもしれないが、戦力としてカウントできる人材である必要はある。今回は4月からのAFC U-23アジアカップでチームが大きく成長したことも、OAゼロに踏み切る要因の1つになった。
そもそも、五輪はFIFAワールドカップの予選や本大会と異なり、FIFAが定めるインターナショナルマッチウィーク外であり、AFCアジアカップのような公式の大陸選手権でもないため、各クラブに選手を派遣する義務はない。招集するためには、所属元クラブと選手の両方の承諾を取らなくてはいけない。JFAは欧州にスタッフを常駐させ、日本人選手が所属するクラブと綿密にコミュニケーションを取っているが、この期間で移籍してしまうと話が変わってくる。
「移籍の可能性があったり、移籍先のクラブがどこになるか決まらない状況で、(OA候補選手たちは)五輪のチームに迷惑はかけたくない思いもあるので本当にデリケート。たとえ『じゃあ行きますよ』と本人が言ったとしても、突然大きな移籍が動き出すかもしれない。五輪の期間はクラブでトレーニングをする大事な時期になる。とてつもない競争の中でやるレベルの選手たちなので、ポジションが取れなければ9月のワールドカップ予選も呼ばれなくなってしまうリスクもある」(山本)
そういったリスクは森保一監督率いるA代表にマイナスに働く可能性もある。Jリーグなどに所属する選手にとっては国際舞台で自身の価値をアピールするチャンスだが、欧州5大リーグでプレーする選手にとっては、そういったチャンスより怪我などのリスクの方が大きくなる。高いレベルでプレーする選手が増えたことは日本サッカーの成長の証かもしれないが、こと五輪においては難しい運営や選考を強いられることになった。
大岩剛監督はこれまでも、そして3日のメンバー発表でも「今回選んだメンバーがベストメンバー」と繰り返してきた。山本ダイレクターは「難しい選択を選手に背負わせるのは、我々としては避けたい」と言う。OAを招集する可能性は最後まで模索されたが、JFAは難しい決断を迫られる格好となった。
(取材・文:加藤健一)
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