試合中にみせたフランス代表の柔軟性
両者の間にあった最大の差は「柔軟性」だ。
ベルギー代表はキックオフ直後から右サイドのヤニック・カラスコとティモシー・カスターニュのコンビを中心に攻撃を展開し、実際に彼らの連係で大きなチャンスが訪れた場面もあった。
相手にペースを握られる難しい試合展開でも、グループリーグでPKからしかゴールを奪われなかったフランス代表の堅守は強みになる。最終ラインには守備で無理が効く選手が揃っており、守護神のマイク・メニャンも絶好調。簡単には決定機を作らせない。
初手のアプローチに成功したベルギー代表だったがチャンスをものにできず、30分ごろからはフランス代表が一方的に攻める展開となる。そこで見られたのが「柔軟性」だ。
キックオフ直後は右WGで先発出場したアントワーヌ・グリーズマンの位置がゴールから遠すぎたことで、トップ下起用がハマっていたグループリーグとは対象的に味方選手との近い距離でのパスワークからチャンスを演出する機会が少なかった。
そうした中で30分ごろからフランス代表は大胆に両サイドバックが高い位置を取る“幅を使った攻撃”を展開した。その代表例が34分のジュール・クンデのクロスからマルクス・テュラムがヘッドで合わせたシーンだろう。
グリーズマンが右サイドから内側に絞ることで、ベルギー代表の左SBアルトゥール・テアテもそれに釣られて絞っての対応となり、空いたスペースに右SBのジュール・クンデが上がって攻撃参加するシーンが増えた。そこにアンカーのオーレリアン・チュアメニが見事なロングパスを通すことで、フランス代表は攻撃に活路を見出した。
交代策などは関係なしに、試合途中で攻撃の形を変えることができる「柔軟性」はフランス代表の強みと言えるだろう。