中野瑠馬デビューの裏側「実は昨日の練習でまったくよくなくて…」
「この前のレイソル戦で追いつかれていたし、そういう時間帯に自分が投入された意味が何かと言えば、役割がはっきりしていました。なので、自分の役割をまっとうすることだけに集中しました」
一美と同じ3トップの右を主戦場にしながら、とにかく前後左右に動き回った。託されたタスクに照らし合わせれば、ボールタッチが一度だけに終わっても気にしない。勝利を告げる池内明彦主審の笛を、敵地レモンガススタジアム平塚のピッチの上で聞いた心境を、中野は「やはり気持ちがいいですね」とこう続けた。
「自分はフレッシュなので、守備で何回も何回も前から追う。そういうところを意識していました」
ここで素朴な疑問が頭をもたげてくる。京都を率いる曺貴裁監督は、公式戦の出場が昨年3月のガンバ大阪とのYBCルヴァンカップ・グループリーグの1試合だけだった中野を、なぜ湘南戦に臨む遠征メンバーに抜擢したのか。しかも、指揮官は湘南後の公式会見で中野に対してこう言及している。
「実は昨日の練習でまったくよくなくて、メンバーを選ぶなかで少し迷いがありました」
引き分けに終わった柏戦で、1点をリードしていた京都は79分からそれまでの4バックを3バックにスイッチしていた。決して守り切れ、というメッセージを込めた采配ではなかったと曺監督は振り返る。
「柏戦でも『ボールを奪いにいくな』と言ったわけじゃないけれども、勝ちたい気持ちが先行しすぎて、選手たちの意識のなかでは後ろでボールを跳ね返すプレーがメインの仕事になってしまった。その点を反省して、今日は努力がしっかりと評価されるような体系を組もうという狙いのなかで若い選手たちも使いました」